第53話
「アンナ、ここはこうした方が美味しく出来上がるわ。」
「ナンミ、卵を10個追加で用意してくれるかしら。」
ルッカ様が王都に向かわれてから早3日、後発でルッカ様の荷物などを届けるという事で私は日持ちするお菓子や食べ物を作って貰っている。
もちろん私もクッキーからブランデーたっぷりのパウンドケーキにラスクと作っているの。
「…ママ!」
無心になって色々作っているといつの間にか咲百合が呼んで居た。
「!!さーちゃん。ごめんなさいどうしたのかしら?」
「ねぇママ、ルッカ様が居ないと寂しい?」
最近誕生日が来て無事6歳になった咲百合、大人の事を昔からよく見ていたけれども私の気持ちもバレていたみたいね。
思わずドキッとしてしまったけれども
「さーちゃん、そうね。寂しいのかもしれないわ。」
「あのね、私はルッカ様がパパになってくれた嬉しいよ?」
「…っ!」
「大人の事はよく分からないけどさ、公爵様達言ってたよ?2人が結婚するなら力になるのに2人が相談してくれないから口出しは出来ないって」
最近では公爵家での教育も淑女教育も始まってきてよりマセて来ている気もしないけれども公爵様達がそんな風に思ってくれていたとは思わなかったので少し驚いたが、自分の気持ちにもう少し素直になっても良いのかもしれないとふと思ったの。
元旦那の事があったからどこかで臆病になっていたのかもしれないわね。
「私はしばらく公爵家でお泊まりするからさ、ママはルッカ様を追っかけて王都に行ってきて。」
「え?ええええ!?」
「お!それがいい!ユーコさんココは私たちに任せてさっさと準備してきてよ。」
「ちょっ、アンナ?」
「ってことでユーコさん、急がないと間に合わないですよ。ルッカ様の荷物を運ぶ馬車に乗せてもらわないと!」
「ナンミまで!?」
こうしてみんなに後押しされて荷造りすることになったのだけれども何を用意すれば良いのか分からず伯爵家の侍女さん達に丸投げしてしまったで、さっきの続きを作りに戻り出来上がったお菓子や料理を収納して一息つく。
出発は明日の早朝という事で公爵様に咲百合の事をお願いするお手紙を書いてからサンクート様にお祈りする。
『由布子、お久しぶりですね』
久しぶりにサンクート様からお声掛けをして貰えた。
「はい、お久しぶりです。」
『ルッカの所に行くようですね。私は貴女の幸せを望みます。』
「は、はい。確かにルッカ様の所に明日向かいますが彼が私のことを望んでくれるとは限りませんし。」
サンクート様はこの世界に来ることになった時から幸せになりなさいと言ってくれていて神様だけれども、親のように見守ってくださる方がいてくれることがとても嬉しいの。
『その事ですが、本来なら干渉するべき事ではないのですが、貴女にも覚悟を気決める時間が必要だと思うので伝えておきます。』
「覚悟ですか?」
貴族の奥様になれるとは思っていないけれどももしルッカ様が望んでくれるならばどんなに困難でもルッカ様の傍に居たいと思っているのではまだ覚悟が足りないのかしら?
『つい先日までならあなたの気持ち一つであなた達は結婚出来たかもしれません。しかし、状況が変わった為彼は王都に向かったのです。』
「状況が変わった…」
『彼は後に王になる事が決まりました。』
しばらく言葉が出てこない。
『その為の覚悟になります。』
いつものサンクート様の声なのに頭の中に響きその言葉がグルグルする。
『王都に向かう道中ゆっくり考える時間にするといいよ。』
そういたわる声が聞こえそのままサンクート様とのお話が終わったがしばらくその場から動けなかった。
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