第7話 『ゴリ爺は嘘をつかない』

 そして、しばらくした頃。日が昇り、街に活気が出始めていた。俺は焦っていた。


「ゴリ爺遅えなぁ……」


 いつもならもうとっくに用意をしている時間になっていた。というか、そろそろ始めないとやばい。いつもは俺に開店時刻30分前には完璧な状態にしておけと言ってるくせに、自分がサボってんじゃねえか。


「……ちょっと呼びに行ってくるか」


 そしてたどり着いたスタッフルーム。ひどく狭く散らかったその部屋は、真ん中に小さな机が置かれている。普段は机の上も乱雑に散らかっているのだが、今日はそれらが全部下に落とされ、代わりにその机には汚い字で書かれた一枚の手紙が残されていた。


『じゃあ今日いないから。

 料理は出さなくていい。今日は料理が出せないと言ってくれれば通るはずだ。

 飲み物だが、コーヒーと紅茶なら一応ユナも及第点だから遠慮なく出していい。それ以外は出すな。それが飲めないと死ぬ病気の奴が来ない限り絶対出すな。店を潰したくなければ出すな。

 どうせいつもの客しか来ないんだし、大丈夫だよな』


 俺はぽかんと口を開けっ放しで読んでいた。2度目を読んだ。3度目を読んだ。やっと、理解した。


「あんのジジイ………」


 手紙を乱雑に手に取った。


「そうだったな‼なんか解決したふうな雰囲気出してたけどなんにも変わってねえや‼やっべえやっべえどうしよ‼」


 ぎゅっと、羊皮紙を握り潰した。


 あの感動を返せ‼

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