俺は決してシスコンではないはず!〜周りはシスコンと言うが、ただたんに妹が可愛すぎるだけなのだが?〜

津ヶ谷

第1話 妹が出来るの?

 薄暗いリビングで特に何の会話も無く、カップ麺をすする。

今日は珍しく親父も家に帰ってきていた。


「なぁ、俺、再婚しようと思っているんだけど、どう思う?」


 父が唐突に口にした。


「俺ももう子供じゃないんだから親父の好きにすればいいだろ。ってか、そんな忙しくて結婚とか大丈夫なのか?」


 父はプロのカメラマンで、世界を飛び回る世界をしている。

家にも滅多に帰って来ない。


「お前を1人で寂しい思いをさせて来たからな。家族ができるのはいいかと思ってな。向こうにも娘さんが居てな。お前の妹になるが、それでも構わないか?」

「そんなん、気にすんなよ。俺は大丈夫だよ」

「そうか、ありがとう」


 男の親子の会話なんてだいたいこんなもんじゃないだろうか。


 母は俺が産まれてからすぐに息を引き取ったという。

それから父は男手一つで俺を育ててくれた。

だから、多少忙しくても家に帰って来なくても文句は言わなかった。


「来週の土曜って空いてるか?」

「バイトも入れてないし、空いているよ」

「なら、その日に顔合わせと行こう」


 父の提案に俺は素直に従った。


「お前に小遣いあげてるし、別にバイトしなくてもいいんだぞ?」


 毎月、父親からは十分すぎるほどのお小遣いを貰っていた。


「自分で稼いでみたいお年頃なんだよ」

「なんだそりゃ」


 会話を終えると、また無言で残りのカップ麺をすすった。


***


 なんだかんだで一週間が経過しようとしていた。

今日は親父の再婚相手との顔合わせの日である。


「これでいいのか?」

「いいんじゃないか」


 俺は珍しくスーツに袖を通した。

親父もダブルのスーツを着ていた。


「着いたぞ」

「おう」


 親父の運転する車で隣町の駅近くにある喫茶店に到着した。


「なんか緊張するな」

「なんで親父が緊張してんだよ」

「分からん」


 先に着いた俺たちは、店内で待っていた。

俺と親父が喫茶店に入った数分後、親子と思われる2人の女性が入ってきた。

女性と言っても1人は高校生くらいの女の子と言った方がいいだろうか。


「あ、どうも」


 親父が立ち上がり、右手を少し上げた。

それに答えるように女性も会釈をした。

彼女が親父の再婚相手なのだろう。


「こんにちは」

「ああ、わざわざありがとうな」


 彼女たちも俺と親父の対面の席へと腰を下ろした。


「紹介するよ。こちら、俺の再婚相手の美咲さんとその娘さんの紗良さんだ。こいつは俺の息子の春輝だ」


 親父は一通り紹介してくれた。


「初めまして、お父さんと再婚させてもらう美咲です」


 そう言うと彼女は微笑みを浮かべた。

なんて美人な人なのだろうかと思う。


「初めまして。春輝です」


 俺も挨拶を返した。


「ほ、ほら。貴女も挨拶しなさい。貴女のお兄さんになる人なのよ」

「う、うん。は、初めまして紗良です……その、よろしくお願いします」


 そう言って紗良は頭を下げた。

めちゃくちゃ美少女が少し恥ずかしいそうにしている。

その姿に俺は少し、いや、かなり見入ってしまった。


「こ、こちらこそよろしくね」


 これが東條春輝と妹になる、東條紗良の出会いであった。

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