第2話 隣国の姫と執事

少年が店から出るとユキは口を開き「…ねぇ?どうしてそういつもいつもお店に来る人を小馬鹿にしたように話すの?」と呆れ気味に私に聞いてきた為私は「私から人を小馬鹿にすることを取ったら一体何が残るというのかね?それに彼と私はお互いが遠慮し合う仲では無いと思うのだが?」と言うと双子の片割れのシャインが笑いながら「ユキさん無駄だよ無駄無駄、マスターに人を小馬鹿にするな、なんて言おうものなら禁煙しろって言われた時よりもボーッとするだろうし気持ち悪いよ」ともう片割れのリヒトと共にケラケラと笑う。

「…貴様ら私に対してそのような事を言ってもいいのか?後悔することになるぞ?」と私が言うと今度はリヒトが「マスターが僕らと戦って勝てると思ってるの?自分の力は自分がよくわかってるでしょ?」とケラケラと笑いながら余裕ぶっていたので私は「…いつ私が貴様らと直接戦うと言った?なんなら貴様らの食事を3日抜いてやってもいいし…これから毎食貴様らが私に泣いて謝るまで貴様らにアレを出してやってもいいんだぞ?」と私が返すと2人は顔を青くし「OKわかった、働くからさ!!アレは勘弁してよ!!」と言いながら凄まじい速さで少年が使用した食器を洗い、片付ける。片付けも終わり、私がタバコを吸いに裏口へ向かおうとするとドアが開き、バラの香りと共に若いドレス姿の女性と片足が無い中年の執事が入ってきた。ユキはすぐに「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」と言いながら私の服の裾を掴み、無言で仕事をしろ、とプレッシャーをかけてきたので仕方なくタバコをしまい、エプロンをつけた。そんな私とユキの無言のやり取りを見て女性は「…フフっここは本当に変わりませんね」と笑い始めた。私もユキも全く分からず、2人を見るが知り合いにこのような2人が居たかどうか記憶をさぐっているうちに女性が口を開き「ご無沙汰しております、サクラですマスターさん、ユキさん」と会釈をされ、初めて思い出した、もう何年も前にこの国が百鬼夜行のような化け物集団に襲撃された際にたまたま来ていた隣国のお姫様とそのお付の執事…確か狼の獣人でヴァルケンという名の2人組であった。ヴァルケンはその時の姿と全く変わらず、サクラは当時はまだ少女の面影を残しており、可愛らしいというイメージであったが月日が流れ、美しく、そして気品のある女性へと成長していた。ユキはサクラの手を取り、「サクラちゃん久しぶりだね元気にしていたみたいでよかった…」と言うと当のサクラは「ユキさんも元気でよかったです…そして…」と続けようとしたがサクラは口をつむぐ、どこか申し訳なさそうな顔をし、俯く。「…立ち話もなんだ、ゆっくりと座ってはどうかね?サクラもいつまでもその男に肩を貸しているのでは疲れるだろ?」という私の一言でユキははっと我に返り、カウンター内から出てヴァルケンへ肩を貸し、カウンター席までゆっくり一歩一歩進み、まずサクラを座らせ、次いでヴァルケンを座らせた。

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