第30話 おっけーぱんつ

 休日にクラスの男の子と会うって、別に彼氏とかそういう相手じゃなくても身だしなみには気を遣う。

 たとえ、勉強会だとか、合成魔法発表会とかそういう前提であっても……今日のパンツはただのミカンパンツではなくて、アネストちゃんと一緒に背伸びして買ったセクシーなオレンジレースだったり、ちょっと短めのスカートを穿いているわけであって、別に誘惑とかそういうんじゃなくて、ちょっとぐらい「あっ、かわいい」って男の子に思われでもしたら儲けものみたいな下心だったり……まぁ、ようするに……


「ガチで動くなんて聞いてないよ~」

「はぁ……」

「よいではありませんか! 精力的に外でも中でも体を動かして……中でも……はぅ」


 アネストちゃんの家の広い庭。

 子供の頃から走り回ったり、あとは真面目で努力家なアネストちゃんがトレーニングで汗を流したりとか、色々とやるには十分なお庭。

 そこで、何か知らないけど、エッチな意味じゃない「ヤろう」ってことになっちゃった。


「っていうか、私たちの力を見るって言ってたけど、どうすればいいの? まさか……寸止め戦争ゲーム?」

「えっ!? そうなのですか、セカイ!? じゃ、じゃあ、あ、あなたは、私を……ぬ、脱がすのですね……え? でも、初めてが外でというのは……いやです、家の人たちに見られます! せめて、部屋で!」

「そうじゃなくて!」


 昨日のこともあるし、どうなんだろう? 私、パンツとブラは勝負用だから問題なしだけど……でも、セカイくんは……


「いや、脱がすのは無しだ。単純に三人がかりでかかって来いってことだ」

「え? 三人で……ら、ららんこ!?」

「おい、そろそろアネストの頭を殴っていいか?」


 脱がさないけど、一応私たち三人でセカイくんに挑めってことか~。まぁ、私たち三人が脱いじゃうとセカイくんもゲーゲーしちゃうしね。

 でも……


「随分と余裕ね。聖なる勇者一族における谷間の世代だからって、舐めているの?」


 昨日のクラス全員がかりと同じように、三人いっぺんにかかってこい。

 セカイくんの底知れない力を考えたらそれだけの自信があるんだろうけど、ディーちゃんとしては不満な様子。

 まぁ、私としても「なめてるな~」って思うけど。



「あ? 舐められないぐらいのものがあんのか?」


「「「むっ!?」」」



 うん、舐めてる。セカイくんはニタリと物凄い悪い笑顔を浮かべて……そっちがその気なら……

「セカイくん!」

「あ? なんだよ、オレンジ。何か文句でも……」

「ほ……ほい! ぱんちゅ♡」

「ッ!?」


 セカイくんの弱点は知ってるんだもん。は、恥ずかしいけど、ちょっとスカートピロっと捲ってパンツ見せちゃえば……


「しゃ、シャイニ!?」

「やめなさいよ、バカ! そんなんだからビッチとか言われ―――」


 えへへへ、女の子のエッチな姿にえずいちゃうセカイくんには、私のパンチラだけで会心の一撃を……



「…………ん?」


「…………あれ?」


「「……………?」」


 

 あれ? なんか、セカイくん……普通に首を傾げて……あれ? いま、よく見えなかったのかな!?


「せ、セカイくん、もういっかい! ほ、ほら! チラ、チラ! う、うっふ~ん♡」

「…………? ……あれ?」

「へっ?」


 あれ!? セカイくんが自分自身も首を傾げて……あれ?


「せ、セカイ、え?」

「ちょっと、あんた……セカイ、なんともないの?」

「……あ……おお……」


 なんで!? セカイくんが私のパンチラを二回見ても全然ダメージ無さそう!?


「うそ、だ、だって、今日のは勝負パンツだよ!? セクシーだよ!? ほ、ほら、もっと見ていいんだよ? セクシー! お、お尻からも見せちゃうよ! ほら、お尻フリフリ~♪」


 魔法騎士養成学校女子生徒の健康的な白い生足とふとももを加えたオレンジパンティーを、む、む、無反応!?

 背中を見せてお尻を突き出して、プリプリ振っちゃうよ!? これなら……


「……あれぇ?」


 これでも?! 


「そ、そういえば……セカイは初めて出会った日……シャイニの下着を見ても特に反応は……」

「え?! で、でも、あれは……シャイニが子供みたいな下着だったから、そういう気持ちにならなかっただけで……本当は……」

「……では、セカイは女性の下着姿までなら大丈夫と!?」


 ッ!? 


「え!?」

「そ、そーなの!?」


 これには私だけじゃなくてセカイくんもビックリ。

 まさかセカイくんが女の子のパンチラは大丈夫だったなんて……いや、大丈夫だとしてもちょっとぐらいは反応してくれても……


「……となると、私も……せ……セカイッ!?」

「あ?」

「うぅ……こ、これは、ど、どうです!?」

「ッッ!!??」


 あ……


「ちょっ、あ、アネストッ!!??」

「のわあああ、アネストちゃん!?」

  

 アネストちゃんが試して確認しようと、肩を震わせながらも両手でスカートのすそを持ち上げて、あの白くて布地が少ない紐のハートマークパンティーを見せ……もう、アネストちゃんがどんどん私の知らないアネストちゃんになっていく!?

 まぁ、そもそも既にそのハートマークの奥の一番大事な部分をセカイくんに見られてるから、パンツぐらい……



「うぷっ!?」


「「「……え??」」」


「おえぇぇぇ!? げほっ、げぇ、うぷっ!?」



 ……あれ?



「え? せ、セカイ?」

「うそ……アネストの下着には……」

「え? でも、私のは……アレ? っ、セカイくん! もっかいこっちに注目! いえ~い、はい、オレンジパンチュ♡」

「……はあ、はあ、はあ……あ? …………ん? ……ああ……まぁ……」


 もっかい見せたらまた!? え!? なんで!?


「こ、これは一体……なんで、アネストには……いや、というか何で、オレンジビッチのパンツは平気なんだ?」


 これは私たちだけじゃなく、セカイくん本人も分かってない様子。

 でも、ほんとうになんで?



「ま、まさか!?」



 そのとき、ディーちゃんがハッとしたように何かに気づき……



「セカイ……あ、あんた……シャイニの下着が平気というより……シャイニ自体に性的興奮を覚えないだけなんじゃ……」


「ッッ!!??」



 そして、その答えは私の女としての尊厳を色々とぶち壊すような仮説だった。


「…………そ、そーなの? セカイくん……」

「いや、そんなこと聞かれても……」


 は? 私のパンツ見ても反応しない? アネストちゃんのパンツには反応するくせに?

 クラスの女の子たちの裸を見てゲーゲーしてたのに、私の勝負下着のセクシーパンチラどころかパンモロしても……なにも……


「私は……女の子として何とも思わないと……」


 は? なにそれ……なに? 私を否定? イミワカンナイし……は? よくわかんないけど……


「ユルサナイ……」

「あ? オレンジ……?」


 もう……どうなったって知るもんか……



「絶対に……ユルサナイッッ!!」


「おい……ッ!!??」



 両手の袖をまくる。靴下もまくる。

 その下の肌に刻まれた……


「ちょっ、シャイニ!? まさか……」

「え、解く気!? あんた、それ、パパたちにダメって、『私たち』言われてたでしょ!?」


 うん、言われた。

 お父さんたちが「これに頼ったら、他の成長を止めることになる」なんて言ってたから、魔法で封じて……でも……


「だって、こうでもしないと……セカイくんを捕まえられないし……」

「なに?」


 セカイくんの運動神経は私以上……この状態の私の。

 でも、ダメって言われてたけど……これを外せば……


「スキル貞操帯解除!」

「それは……たしか……身体能力や魔力などのスキルを抑え込む……捕虜や囚人に対して使われる……」

「は~……いくよッ!!」


 次の瞬間、私は走り出していた。

 とにかく目の前の男をぶっ飛ばすために!


「ちょ、シャイニ!?」

「……ッ、は……え?」


 風に……ううん、「光」になってぶっ飛ばす。

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