第8話 脅し……?

 その日の帰り、俺は生徒会室に呼び出されていた。



「失礼します……」

「いらっしゃい。ほら、水島さん、彼だよ」

「ほう……」


 返事をした女性がいきなり殴りかかってきた。

 あまりに急なことで頭が動かなかったが、身体は動いてしまっていた。

 気が付くと彼女は俺のしたで間接を決められていた。


「えっ、あっ!すいません!」


 俺は慌てて退く。


「いや、悪いのはこちらだ。すまなかったな。ところで君は何か武道でも?」

「ええと……近所にあった道場で総合武術を習っていました」

「それはまた、なぜ?」

「すいません。それは誰にも言えないです」


 言えるはずない……

 もし何かあったとき、大事な人を護れるように。もしくは、好きな人を護って好感度UP

 なんて小さい頃に道場のおっさんに唆されてやってたなんて……

 恥ずかしすぎて言えない……


「ふむ……まあ人それぞれ理由は様々だしな。ところで先程、?」

「いや……」


 マズイマズイマズイ

 バレてる?!いやまだ希望はある!


「そうかそうか。らしいぞ会長」

「うん?おかしいね。確かに君がいたはずなんだが……」

「人違いだと思いますよ」

「……にしてもなんだいその喋り方は。この前と違うが」


 眉を寄せて会長が問うてきた。


「いえ、本来はこうなんです。ただ、ガサツな感じをしていればそこのストーカーが離れてくれるのではないかと」

「ちょ、ちょっと!言うに事欠いてストーカーって。大体……」

「黒川滝」

「な、なんで今滝くんの名前が出てくるのよ」


 実はこの女、俺に近づく振りをして、ずっと滝を狙っていた。


「いや、流石に気付きますよ。二人でいるときもさりげなく滝について聞こうとしてたし、滝が近くにいるときなんか何回もチラチラ見てるし」

「なっ……」

「ストーップ。その話はまた今度にしてもらって、取り敢えず話を戻そうか」


 話が長くなると思ったのか会長が止めにはいる。

 そのまま流れてくれれば良かったのに……


「ねえ、鈴木君?眼鏡を取ると随分印象が変わるみたいじゃないか」


 ……もう無理そかな~


「すいませんでした!あれは正当防衛なんで許して下さい」


 バッ、と頭を下げる。


「いや、元から怒るつもりはなかったよ。ただなんのお咎めもなしって訳にもいかないんだよ。なにしろ暴力沙汰だからね。そこで、だね」


 なんか嫌な予感しかしないんだが……


「君には生徒会補佐としての仕事をしつつ、水島さんの下でも働いてもらいたい。勿論君に拒否権はないよ」

「水島さんの下、というと?」

「ん?ああ、私は風紀委員長だ。知らなかったか?まあいい、私は女子が故に舐められることもある。そこで、あの『番犬』が来てくれるならありがたいと思ってな」


 無闇に番犬とか言わないで欲しかったな~


「えっ?!鈴木君があの番犬?!」


 ほらみら、騒ぎ出すやつが出てきたよ。


「わかりました。用は以上でしたでしょうか?それでは失礼します」


 まだ何か騒いでるみたいだが知らん。

 知らんったら知らん。

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