第4話 囚われている場所

「奥に池がある! 行ってくる!」


 伊織がそう二人に行って走ってしまう。


「ちょっちょっと! 勝手に動かないで!」

「止まりなさーい!」


 美桜と琴葉が伊織を止めようとするも伊織にその声は届いていなく、伊織は池に向かって走り出してしまった。


「ここが村の中心か……本当に誰もいないな……」


 伊織が綺麗な澄んでいる池を見て水が綺麗な村なんだなと感じていた。すると、伊織の視線の端に一人の子供の姿が映った。


「今子供の姿が……おーい!」


 伊織は子供が走り去った方向に走った。


「確かこっちの方に……あっ、いた!」


 伊織が見つけた子供は女の子であり、Tシャツに青い短パンを履いていた。伊織が話しかけると女の子はこの村に人はいないよと俯いて言った。


「どういうこと? この村の人はいないの?」

「毎日人が消えて、今は私しかいないの……」


 伊織は一体どういうことだと考えるも、答えは出なかった。今はこの子供を美桜達のもとに連れて行こうと決めた。


「こっちに俺の仲間がいるから一緒に行こう」

「うん……」

「大丈夫だよ! 俺の仲間が何とかしてくれるさ!」

「うん!」


 女の子は伊織の言葉を聞いて笑顔になっていた。


「ほら、この二人が俺の仲間だよ!」


 伊織はそう言うと、美桜と琴葉に出会った女の子を紹介し始める。


「さっきそこの池で出会った女の子だよ! 俺のまだ名前聞いていないからお名前教えてくれるかな?」


 伊織は女の子と目線を合わせて自己紹介をしてと言う。女の子はその言葉を聞くと、名前を言い始める。


「水郷愛って言います。 この村の村長って言うのかな? その娘です」


 女の子が自己紹介をすると、美桜と琴葉が驚いていた。


「村長の娘なの!? この村に人がいない理由知ってる!?」


 美桜が女の子の両肩を強く掴んで聞き始めていた。


「この村はどこの地域の村なの!? 村人はどこに行ったの!?」


 美桜が感情的になって何度も女の子に質問をしていると、女の子は怖いと言って泣きそうになってしまっていた。


「ちょちょちょ、一旦止めて! 怖がってるから!」


 伊織のその言葉を聞いた美桜は、ハッとした顔になった。


「ご、ごめんなさい……怖がらせようとしたわけではないの……」

「そうだよね! この姉ちゃんは優しいから君のことを想って焦っちゃったんだよ」


 伊織がフォローをしていると、女の子が伊織の背後に回って顔だけを出した。


「あのね……なんか村に盗賊が来て大人から子供まで連れて行っちゃったの……鉱山? なんか石を掘るって言ってたよ……」


 美桜はその言葉を聞くと、許せないと声を荒げた。琴葉もそれに同意をするも、先を急がなくていいのかと美桜に問いかけた。


「確かに先を急ぐ方が大切ですけど、愛ちゃんを放っておくこともできないわ!」


 美桜はそう言いながら愛を抱きしめて私たちに任せてと言った。すると愛が美桜を抱きしめ返してお願いと小さな声で呟いて涙を流していた。


「パパとママを助けて……村の人たちを助けて……」


 伊織たちは愛の言葉を聞いて必ず助けようと決意をした。美桜は泣いている愛をとりあえず落ち着かせると、この村のある地域を教えてもらうことにした。


「聞いていいかな? この水郷村の存在する地域の名前って知ってるかな?」


 美桜が愛に聞くと、愛は数秒考える素振りを取った。そして愛は、西邦大陸の東側って聞いたよと美桜に言った。


「西邦大陸!? 本当!?」

「それはかなり遠い場所ですね……なんでこの地域に送ったのでしょうか?」


 美桜と琴葉が悩んでいると、伊織が西邦大陸って何と二人に聞いた。


「そこも知らないの!? どれだけよ!」


 美桜が伊織を怒鳴って馬鹿と罵ると、琴葉が溜息をつきながら伊織に説明を始めた。


「私たちの神聖王国がある場所は中央大陸の真ん中です。 この中央大陸には多数の国々があり、十年前の戦争により神聖王国が中央大陸の国々を傘下に収めて、中央大陸の唯一の国として運営をしているわ。 そして中央大陸の北側に北方大陸があり、そこにある国々が北方連合として活動をしています」


 伊織は説明を受けると、そうだったのかと目を丸くして聞いていた。


「そんなこと知らなかった! 初めて聞いたよ!」


 伊織が驚いた顔をしていると、美桜と琴葉は義務教育だよと溜息をついていた。


「それに十年前なら既に生まれているし六歳くらいだったでしょ? 親とかに教わらなかった?」


 親とかにと聞いた伊織は頬を掻いて親はいないんだと返した。


「生まれた時から一人だったようで、孤児院に預けられてたんだ。 それで俺は進学しないで騎士団員になったんだよ」

「ご、ごめんなさい……知らなくて……」

「いいんだよ。 大丈夫!」


 伊織が大丈夫と言うと、美桜はありがとうと返した。琴葉は今は私たちがいますと笑顔で伊織に話しかけていた。


「ありがとうございます! 嬉しいです!」


伊織のその言葉を聞いた愛は、伊織に屈んでと言った。


「よしよし。 良かったねぇ」

「あ、ありがとうね!」


 愛が伊織の頭を撫でると、伊織も愛の頭を撫でた。美桜はその様子を見ていると、琴葉とこの周辺だとどこに連れて行かれるだろうかと話し合っていた。


「連れて行かれた場所が不明ね……愛ちゃんは場所とか知ってる?」

「場所―? あそこだよ!」


 愛は村から幾分か遠い場所にある山を指差した。愛はあそこに連れて行くっていつも言ってたよと三人に言った。愛が教えてくれた山を見た美桜はすぐに行きましょうと言った。しかし琴葉が武器がありませんとすぐに言う。


「そうだったわ! 装備が何もない!」

「忘れてたの!?」


 伊織が美桜に突っ込むと、愛が武器みたいなの作ってるおじさんの家があるよと教えてくれる。


「本当!? 案内をお願いできるかな?」


 美桜が愛と同じ視線に合わせて聞くと、愛がいいよと笑顔で言ってくれる。愛は村の西側に三人を誘導すると、辿り着いた家は木製の平屋であった。側に置いてある立て看板には農業武器店と書かれていた。


「農業武器店? 農業具を売っているのではないの?」


 美桜が小首を傾げながら農業武器店に入ると、横長の店内には農業具が多数置かれていた。


「武器店とも言ってたけど……その武器は一体どこに……」


 美桜が店内を見渡して農具を持ったり置いたりしていると、伊織がここに隠し扉があると叫んだ。その扉は入り口近くにあるカウンターの棚の後ろにあった。


「この棚を動かせば……あった!」

「こんな隠し方をしているなんてね」


 美桜が扉を開けて中に入ると、そこには多くの種類の武器が置かれていた。剣や斧、槍など多くの種類や形状の武器が棚や机の上に置かれていた。美桜はその光景を見ると、ここの店主は何者なのだろうかと不思議に感じていた。琴葉はこの武器があればと喜んでいると、美桜が伊織にも武器を取りなさいと言った。


「分かった。 俺はこの長剣を貰うよ」

「私はこの長剣でいきます」


 伊織は青と白色の混じった美しい剣と手にし、琴葉は白銀の剣を手にした。美桜は短剣を手にしており、これで行けるわねと二人に言った。伊織は服を変えたいとも考えていたので、薄い軽装の鎧を見つけてそれを着た。


「早く村の人たちを取り戻そう!」

「そうね! 行きましょう!」

「愛ちゃんはここで待っててね!」


 伊織たちの言葉を聞いた愛は、うんと元気な声で待ってると言った。


「ここで待ってるね! お兄ちゃんたち頑張ってね!」


 愛は農業武器屋の中にある椅子に座って三人に手を振った。その姿を見た伊織は、手を振り返して店の扉を閉めた。


「さて、なるべき早く行きましょう! あの山のところね!」


 美桜が指差した山は緑に溢れており、とても鉱山とは思えなかった。しかし、山の反対側に何があるか見ていないので、案内をしてくれたように向かうことにした。


「教えてくれた場所に行けば何か分かるわ! 早く救わないと!」


 美桜がそう二人に言うと、三人は走って山に向かった。村を出て山道を進むこと二時間程度が経過すると、愛が教えてくれた山に近づくことが出来た。

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