第4話

 とりあえず見学していくといいよ、とミクリ所長に言われたので、私は発電所内を見学した。


 発電所の中は、いくつもの「ルーム」に分かれており、カラオケの個室のような広さの中で、自慰行為、性的行為をするらしい。ちゃんとイクところまでイかないと、発電システムが反応してくれない。これを作った教授は天才か。馬鹿か。どっちだ。


 ルーム21の扉が開かれる。丁度シフトが終わったら、こうやって個室から出てきてもいいと教えてもらった。一人の女性がミクリ所長と私に気づき、挨拶をしてきた。


「しょちょー、おはよー」


 金髪の日本人ギャルが出てきた。そしてフリフリのピンクの下着を着ている。アゲアゲのテンションで元気よく挨拶する。


「おはよう、美園ちゃん。ちゃんと敬語使って話せよ~」


「めんどー、お? 後ろの人って新人さん?」


「初めまして。双葉ヒカリと申します。よろしくお願いします」


「お、よろしくー、好みとかあるの?」


「美園ちゃん、実は、ヒカリちゃんは、そういうことやったことがないんだよ」


 ごにょごにょと、ミクリ所長が美園さんに呟く。


「はぇえええ、そいつはおもしれえ!」


 珍しい生き物にでもあったような表情をして、


「私、この子調教してあげる! しょちょー男だからさ、無理っしょ」


「え?」


「確かにそれはそうだ、じゃあ、任せたよ! 所長命令、終わったら帰ってきていいよヒカリちゃん」


「え、え、え?」


 ヒカリにぐいぐいと腕を引っ張られる。ルーム21に私は誘拐された。

 

 扉を開くや否や、美園さんは私に面接の一部始終を尋ねてきた。あと、自分がオナニーをできないこととか。


「ふーん、なるほどね、それは所長困っただろうなーあっひゃっひゃ」


「ですよね……」


 困った私を傍目に、美園さんは私の事をひたすらに笑っていた。


「ちょっと笑いすぎですよぉ、恥ずかしいです……」


「でも、ここ結構高収入を得られるからね。三日以内でちゃんと活躍できる人材にならなきゃね」


 前向きなギャルは私を励ましてくれる。そしてレクチャーしてあげると言われて、私の服をいきなり脱がせ始めた。え、え、え、早くないですか。


「ひゃああああ」


「温泉には入ったことさすがにあるっしょ?」


 私はあっという間にすっぽんぽんになった。ルームの中にはダブルベッドとライト。アロマも焚かれている。そして、でかいサーバーのようなものがある。脱いだ服はベッドの下の方に散乱していた。


「美園さん、今から何をするんでしょうか?」


「とりあえず、寒いだろうからベッドの中でお手本を見せるよ」


「なるほど」


 もはや何が起きても動揺しない。と自分にさっきから言い聞かせている。ベッドの中にくるまって、美園さんは私の方を向いて、パンツの中に手を入れて、いじり始めた。


「ちょっと足りないから協力してよー」


「協力ってなんですか!」


「おっぱい舐めて」


「えええええええええええええええええええええええええええええええ」


 まさかの、生まれて初めての母乳ダイブ! ほぼ初対面の人に対して、乳吸えっていうんですか! 美園さんは、私の顔をはぁはぁと息をたてながら見る。天才子役のように、オンオフの切り替えがはっきりしている。今は完全に『生産モード』だ!!


 ベッドの中にいる乳首に目を向ける。温泉やプールの更衣室で見るより、ずっと変態的だ……。普通はAVのように舐めるべきであろうが、全く舐める気がしないというか気持ちが悪い。吐きそう。


「ああぁあ、召されるーー」


「召されるて何?いっちゃいますか!あああああああ」


「ああ、満たされました」


「満たされた」


「で、あなたうるさいし、結局、乳首舐めていないじゃない」


「すいません」


「別に先輩だからって遠慮する必要ないから」


「ごめんなさい」


 ちょっと美園さんはイライラしていたが、すぐに顔をあかるくして、私に接してきた。


「じゃあ、あなたもやってみてよ、私手伝うから」


「あ、ちょっと」


 美園さんは後ろから私の事を抱いた。ぎゅーっと。女子校で何回も無意味なハグをされたが、それとは違って生身の肌と肌がすれ違っている。なぜか怖いという感情が出てきた。肌の温かみが気持ち悪い。むずむずする、気持ち悪い。うわあああ、なんか知らないけど吐きそう。疲れる。ああ、もうだめ。


「気持ち悪いです! ごめんなさい!」


 私は美園先輩の腕を振り払って、裸のままルームから出た。

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