第21話 聞こえる悲鳴

 神崎は、さもありなんという顔で「予言の書か」と呟いた。

 情報屋の田中はさらに話しを続けた。


「『カリーナ姫と三匹の猫』は最後に王子が姫にキスをします。

 すると、いなくなった三匹の猫がこの世界に戻ってきて、物語は終わります」

「ああ、そうだ」

「これが、どういうことだか分かりますね?」

「なるほど、そういうことか」


 神崎はよく分かったという顔をして田中のいるネットカフェをあとにした。

 外は相変わらず、日差しが強い。


 セイヤが道の何も無いところで、つるっと転んだ。

 いや、正確には何も無かったのではなく、そこにはとけたスライムがいたのである。

 白河桂里奈の頭の上にいたスライムであろう。

 とけた状態で、ここまで一生懸命追ってきたようだ。


「あ痛てて、何もないとこがヌルっとしてたぞ」


 神崎にはそこにスライムがいたことが見えていたが、特に何も言わなかった。


「いゃゃゃゃゃゃーーー、触らないでぇぇぇーーー

 誰か助けてぇぇぇーーー」

「ん? 悲鳴が聞こえる!」

「え、何も聞こえませんぜ」

「いや、このコンビニの二階の部屋から悲鳴が聞こえる」


 目の前の小さなビルは、一階がコンビニになっていて二階から上はワンルームマンションになっていた。

 神崎は階段を駆け上がった。


「この部屋だ」

「兄貴、悲鳴なんて聞こえませんて」


 ドアに鍵はかかっていなかった。

 神崎は思い切りよくドアを開けた。


 狭いマンションの部屋の奥に、黒焦げになってボロボロになった上着を着ていて、ほとんど半裸といっていい男が机に向かっていた。

 そして、男の右手にはおっぱいが握られていた。


「この変態め!」


 そう叫ぶと、神崎は男の頭を強く殴った。

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