第56話 虧月




何もかもを放り出して逃げ出したくなる夜



朧に光る虧月きげつ



君への距離のように霞む




僕が居なくても廻る世界に



僕の存在意義を求める時


 

ピエロの顔は黒く染まり



薄くなった影は涙で滲む



何も変わらぬ世界は



相変わらず何もしないのに僕を打ちのめし



上を向いて躓いて



怪我した足では歩けないと嘆く



儚い願いは虚勢に変わり


 

いつのまにか消える影



膝を濡らして待つ声は



二度と僕には届かない
























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