空の隙間

kia

第1話 叔父

叔父は新興宗教の教祖。


いまはどうだかわからないが、

20年ほど前、最盛期は熊本と東京に拠点があり100人以上の信者がいると

いう話を聞いた。



宇宙中に様々な神がいて、叔父は地球の神の一人。

世界中に散らばる偉人の生まれ変わりを集めて、宇宙滅亡の運命を何度も

回避していると言っていた。



叔父を頼ってわざわざ熊本に来た、聖徳太子や織田信長、豊臣秀吉の生まれ

変わりと名乗る人が私の実家に滞在したことがある。


当人たちと話さなかったので、どういう人なのだかわからないけれど、

他人から与えられた運命や宿命や使命に縛られないと、生きている実感を

持てない人たちなのかと思っていた。




わたしは小さなころ、親の影響で宗教や叔父の話を信じていた。



宗教がらみで、


ある宗教が販売している教祖の霊力が込められた紙を飲むと持病の喘息が

治ると言われたので何年も飲み続けたが、治らなかった。


また、その宗教の教祖から、17歳になったら必ず死ぬと直接宣言されたが、

いまだにわたしは生きている。



叔父もそう。


世界を救い続けているなら、親族で経営している会社から金を巻き上げ、

それを活動資金にせずに、周りの人から救ってゆけ、と心から思う。





そういうわけで、他人の唱える超自然的なものに関して興味はあるけれど、

自分が体験した事以外、信じることがなくなった。





叔父の子は10人いる。

子だくさんという事で新聞にも掲載された大家族だ。

現在は叔父以外、全員の消息は不明。

幸せになっていればいいと思う。

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