第8話:背神追放・ライラ枢機卿視点

「どうやらお前達には枢機卿の資格がないようですね、

 いえ、それ以前に、教会にいる資格すらありません!」


 ローゼマリーが恐ろしい表情でフレディ派の枢機卿を罵ります。


「教会に来てたかだか三年のお前が何を言う!

 おい、急げ、本当に亡くなられてしまうぞ!」


 フレディ派がローゼマリーを無視しようとしました。


「動くな!

 神の御前でなんたる醜態を見せるか!

 フレディ同様天罰が下るぞ!」


 枢機卿会議室が凍り付いた!

 天罰、ローゼマリーは、いや、聖女教皇代理猊下は、本当に天罰が下せるのか?!


「お前達は、神の肖像画に背中を、いや、汚い尻と本性を見せたのだぞ!

 死にたくなければ今直ぐひれ伏せ!」


 まさに、全枢機卿が雷に打たれた思いだった!

 その通りだ、聖女教皇代理猊下の後ろには、神の肖像がある。

 聖女教皇代理猊下を通じて、神に下界の事が伝わっているのなら、フレディ派の連中は自分達の本性を神に知られたことになる。


「枢機卿ともあろう者が、フレディが倒れた理由くらい考えなさい。

 ここは本来なら、最も神の教えを大切にする人間が集まる所なのですよ。

 それを、欲望に満ちた薄汚い人間が枢機卿の位を盗んで集まり、神の代理人を罠に嵌めようと画策したから、天罰が下ったのです。

 今までの歴代枢機卿は神の代理人ではなく、下劣な人間の代表だったから、神が力を貸し与えなかっただけです」


 ゴクリと、自分が無意識に唾を飲んだ音が耳に響きます。

 あまりの恐怖に、心臓が早鐘のようにドクドクと音を立てています。

 顔と背中と脇に、いえ、身体中から嫌な汗が吹き出します。

 間違いありません、聖女教皇代理猊下は天罰を下せるのです。

 私は、私は生きてここを出て行けるのでしょうか?

 私が私利私欲で聖女教皇代理猊下を利用したのは見抜かれているのですから。


「どうか、どうか、どうか、どうか、お許しください!」

「命ばかりは、命ばかりはお助け下さい!」


 フレディ派の連中が扉の前にひれ伏して命乞いしています。

 ここから見ても明らかなくらいガタガタと震えています。

 顔色も死体のように真っ青で、生きている人間とはとても思えません。

 でも、私も似たような状態ですし、その気持ちも痛いほど分かります。

 私も、この場にひれ伏して命乞いすべきでしょうか。


「では、今までの議題は後回しにして、新たな議題を話し合いたいと思います。

 今扉の前にいる背神者達の全資格を剥奪して、背神者として教会から追放したいと思うのですか、反対する者は挙手願います」


 聖女教皇代理猊下が円卓に座っている者、いえ、円卓から立ち上がる事すらできなくなった者達を、射殺すような眼つきで睨め回されます。

 これは最後の審判なのです!

 聖女教皇代理猊下に従い神の教えを守ると誓って生き残るか、逆らって天罰に焼かれて死ぬか、答えなど、決まっています!

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