日本で冒険者やってる俺、ヒーローは諦めてヴィランとして正義を貫く。

Kneeさん

第?話 とある日の朝

「さぁて、今日のネットパトロールの時間だぞ、と」


 薄暗い部屋の中、2人の黒髪の男女がスマホを見ながら座っている。男が壁によりかかって座り、女はその男に寄りかかるようにして頭を肩に乗せている。


 この部屋が薄暗いのは、ただ単に電気を付けていないから。

 時刻は午前6時。カーテンの隙間から差し込む光だけがこの部屋の光源となっている。


「…SNSの投稿を見るだけでも結構事件が起きてるみたいね」

「そうだな。特に気になるのはこの『第2世代冒険者狩り』ってやつだ」


 男が『第2世代冒険者狩り』でSNSの投稿を検索すると、スクロールしてもスクロールしても無くならないほどの投稿が出てきた。


 第2世代冒険者というのは文字通りの意味である。〈冒険者〉という職業ができてすぐ冒険者になった大人達が第1世代。この人たちは主に自衛隊や特殊部隊などの国家機関であり、一般人は3割もいないと言われている。

 そしてダンジョンの上層がある程度安全確保され、『18歳以上で冒険者資格を取得すること』という法律のもとで冒険者になったのが第2世代冒険者である。


「第1世代の何人かが、第2世代冒険者を襲って金品を強奪してるらしいな」

「えぇ。さすがにダンジョン協会もダンジョンの中までは監視し切れないし…」

「証拠がないから犯人に対して何も出来ない、か」


 証拠がなければ、きちんとした動機がなければ、正義の味方は動かない。いや、動けない。

 だからこそ、俺はヒーローを目指すのを辞めた。

 命をかけてでも、例え悪に染まったとしても、全力で悪を倒す。


「行くぞ」

「分かったわ」


 2人を白い光が包み出す。これは《転移》を使う時の光だ。

 男はすぐ側に置いてあった短剣を装備し、女は懐から天秤を取り出す。

 徐々に強くなる光の中、男女は似たような仮面をつける。まるで舞踏会にでも行くかのような、そんな仮面だ。

 仮面をつけた直後、2人の髪が白髪へと変わる。


「転移先は被害が1番多いススキノダンジョンだ」

「じゃあ明日はアキバダンジョンかしらね」


 被害の多い2つの迷宮。多くの第2世代冒険者が金品強奪や強姦、殺人の被害にあっている。

 世間からスーパーヴィランと呼ばれる2人。その仮面の中、唯一見える目には正義の光が灯っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る