第4話 多少

「ねぇ」


 そして、次の日。それは、朝俺が学校に来てすぐのことであった。前野は俺よりも早く登校してきていたようで、席に座ったままで、やってきた俺に話しかけてくる。


「……何?」


「私って、友達いるように見える?」


 ……何だその質問は? と俺が逆に聞きたいような質問だった。


 前野に友だちがいるかどうか? そんなことは正直、俺にとってはどうでもいいことだ。そもそも、前野が友達と……誰かと喋っているところなど見たことがない。


 ……ん? 前野が誰かと喋っているところを見たことがない? ということは……もしかして、前野には友達がいないのではないか?


「……あんまり多くはないんじゃないか?」


 俺はあくまでオブラートに包んだつもりで、前野にそう言った。前野はつまらなそうな顔で俺のことを見ている。


「いや、いないけど」


 前野は特に憚ることもなく、簡単にそう言ってのけた。いや……まぁ、俺も正直に言ったし、別にそれが驚くべきことであるとは思わないけど。


「……そうか」


 そして、俺はその言葉に対してなんと返せばいいのか分からなかった。


 じゃあ、俺が友達になろうか? ……いやいや。そんなことを言えるほど、俺はコミュニケーション能力強者ではない。


 俺が黙っていると、前野は俺から顔をそらし、前方を向いた。会話の終了の合図のように見えた。俺も黙ったままで椅子に座ったのだった。

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