同舟のラメンデ

あぼしん

【1-1】聖鐘歴2020年4月4日 ライド

「じゃあばーちゃん、今日も行ってくるよ」


「気を付けるんだよライド。最近大型魔獣がよく出るってニムさんが言ってたからね」

「ニムさんいい年なのにいつまで木こりやってるんだろうな。魔獣よりも自分の腰を心配した方がいいんじゃねぇの?」

「後継ぎがいないから仕方ないさね。あんたやってみたらどうだい?」

「説教が長そうだから勘弁。んじゃ行ってきます!」

「昼前には帰ってくるんだよ」


勢いよく飛び出て、適度な距離感を保った家々の間を縫う様に駆ける。

見慣れた風景には暖かな日の光が降り注いでいて、先日まで続いていた厳しい寒さ

が嘘の様だ。


村の裏出口に近づく頃には、こりゃ4月まで行商人は来ないかもしれないねぇ、

とボヤいていたミンダおばさんが、朗らかな陽気を浴びて軒先で洗濯物を

干しながらあくびを貪っている。


「おやライド、おはよう。今日も森に収穫に行くのかい?」

「おはようミンダおばさん。今回の冬長かっただろ?おかげで体力有り余っちゃっててさ」

「あんたの事だから心配してないけど気を付けなよ?最近大型魔獣がよく出るって…」

「ニムさんが言ってたんだろ?1分前に聞いたよっじゃあっ」


こけるんじゃないよー、という声に後ろ髪を引かれながら、

徐々に速度を上げていく。

高鳴る鼓動に合わせる様に両膝が交互に天へと突きあげられる。

片足が着地する度に背中を打つカゴ。


森の入り口までもう少し。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

エンプシー・リギウスのよいこのための

わくわく魔獣図鑑


          出版:生命生体研究所

          共著:冒険者協会



1、ピロロ

  みんなだいすきピロロ。

  くろくてまるいからだは10セルメルく

  らい。もりをポンポンとびながらあそん

  でいるよ。おめめがクリクリでかわいい

  ね。みんなにわるさはしないからみかけ

  てもいぢめないでね。


  だい20しゅしていまじゅうだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る