信仰という咎

 この物語に描かれる因習はそれ自体恐ろしいのですが、何より恐ろしいのは、書き手の祖母に対する眼差しです。
 風習への嫌悪感が、祖母への嫌悪感(自身の罪悪感もあるでしょう)となり、文面に滲み出ているような印象を受けました。「あなた」と呼んだり、もう長くないと本人に言ったりするのは、孫と祖母の関係としては異様に思われるからです。
 そして、手紙の最後に頼んだ内容は、お願いというより呪いに近いのではないかと思いました。おばあちゃんが「死んだらお化けになって会いに来る」と約束したのは、孫に寂しい思いをさせたくないという愛情ゆえと推測します。山内さんの嫁を傷つけたのも、孫への愛が理由です。
 その祖母に対して、自分たちの信仰は罪深いものなのだと突きつけます。祖母と孫という愛情で結ばれた関係ではなく、共犯関係であることを認識させるのです。死してなお罪を忘れさせないという態度で祖母に向き合う書き手が、とても恐ろしいと感じました。
 戦々恐々としながらも、文字を追う目が止まらない、そんな面白い小説でした。

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