VOL.6

 新幹線で新神戸まで行き、駅前からタクシーに乗って、港近くの裏町にあるビル・・・・銃を扱っている店と言うのは、大体どこもこんなところにあるものだなと思いながら、俺は狭い階段を上がった。


 俺の行きつけの、横浜にある『山中銃砲店』よりは少しばかり大きい。

『GUNSHOP TANABE』

 と、凝った字体の看板が掲げてあるドアの前に立った。

 真ん中には公安委員会の標章も貼ってある。

 

 俺はそいつを確認して、ノブに手を掛ける。

 手ごたえがなく、意外とあっさり開いた。

 

 凡そ20畳ほどの店内には、ショーケースと、壁には陳列台が設けてあり、銃が幾つも並べられていた。


『いらっしゃい』

 ジョン・レノンみたいな丸い眼鏡をかけ、グレーのパーカーに薄汚れたデニムのエプロンを掛けた35~6といった男が不愛想な声で俺に言った。


『拳銃の弾丸が欲しいんだがね。1カートン。.45ACP弾。』

『勿論ありますよ。その前に免許を・・・・あと弾丸譲受許可証を』


 俺は懐から認可証ライセンスを出して提示する。

『で?弾丸の譲受許可証の方は?』

『ない』

『お客さん、あんまりからかっちゃいけませんよ。』愛想笑いの中に、どこかこちらを馬鹿にしたような感じが見て取れる。


『そうか・・・・そりゃ残念だな。いやね、あんたの所だったら、許可証なしでも売ってくれるって聞いたものだから』

 男はカウンターの下に手をやり、何かを探ろうとする仕草を見せた。

 

 だが、俺の手はそれより早く、M1917を抜いて、彼の胸に銃口を突き付けていた。

『あんたこそプロの俺をからかうなよ。ここがどういう店か、調べはついてるんだ。探偵は警察オマワリほど甘くはないんだぜ?』


『な、何が望みだ?』

 男は両手を上げて、上ずったような声で俺に言った。

『本当のことを教えてくれたら、俺も黙って退散する・・・・この店に銃を卸しているのがどこの誰だか、それさえ聞かせてくれりゃいいんだ』


 2時間ほど後、元町の一角にある、かなり高いビルの前に俺はいた。

 高層ビル、とまではゆかないが、20階はあるだろうオフィスビルだった。

 あの銃砲店の主人は、問題の貿易会社は最上階にあるといっていた。


 最上階と聞いて俺は少しばかり迷った。

”まあいつものやり方を曲げるのも業腹だ”そう思い、俺は片側の

『非常階段』と表示の出ているドアの方に向かった。

 (その前にエレベーターのスイッチを押し、開いたドアの内側の操作パネルで20階のボタンを選んでおくのを忘れなかった。)

 流石に20階を歩くのは、いくら何でも応えると思うだろう?

 くたびれはしたが、なんてことはなかった。

 20階の踊り場に着く。

 俺は重い扉を少しだけ開け、中を覗いた。


 サングラスにダークスーツ姿の、イカにもという男が三人、エレベーターが上がってくるのを待ち構えていた。

”思った通りだ”

 俺は呟いた。

どうせあの銃砲店の店主が知らせてきたんだろう。

 三人の内二人は、レミントンのショットガン。

 一人はコルトのコンバット・コマンダーを構えている。

 目線は揃ってエレベーターの箱の上の数字に向いている。

 吹き出さないのに一苦労だ。

 

 俺は片手をドアノブにかけ、M1917を懐から抜く。

 

 右足でドアを思い切り蹴飛ばし、フロアに躍り出ると同時に、天井に向けて一発発射した。

 電子レンジの終了音みたいな音がして、エレベーターが開く。

 はっとしたように三人の視線がこちらに向くと、自然と銃口も水平になる。

 それを確認したと同時に、迷うことなく、俺は立て続けに三連射し、肩、腰、肩を撃ちぬいてやった。

 三人はのけぞるように倒れ、武器をその場に放り出す。

 俺はゆっくり近づき、余裕の表情で武器を取り上げて弾丸を抜き、ホールの隅に片付けた。


『物騒な商売アキナイをしてる癖に緊張感と用心深さに欠けてるな。エレベーターの箱の中に監視カメラくらい付けとけよ』

 俺は拳銃を構えたまま、奴らに向かって笑みを浮かべる。

 幸い、三人とも銃創は貫通しており、命に別状はない。

 ”俺の腕前もまんざらじゃないな。”

 久々に、自分で自分を褒めてやりたくなった。

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