第4話 学園の不幸

  沖縄県那覇市能力育成学園


 今日からこの高校に入学することになった。

 俺はまだ一年生だが冬に入っている。この学園には二つのコースがあるらしいが無理やり悪魔と戦うコースにされていた。

 このコースに入っている人数は一年生で俺を合わせて四人いるらしい。

 先生に案内されて教室につく。

 少し緊張するが先生は普通にドアを開け、

 「今日から新しい仲間が増える。なかよくしろよ」

 「じゃあ自己紹介しろ」

 と言った。

 先生についていった俺は黒板の前にいたので、あるあるの黒板に名前を書いた。

 「風慎吾です。よろしくお願いします」

 礼をしてクラスの人の顔を見ると、


 机に足を乗せているヤンキー

 肘をついて違う方向を見ている女の子

 笑顔で俺を見ている優しそうな男の子


 うわ、みんなへんな奴ら。

 関わんないでおこ。

 拍手は笑顔で見ていた人だけしてくれてその他はオールスルー。

 悲しいな。

 ピエン

 「席は空いてるところに座れ」 

 と言われて俺は席に着く。

 前は足を机に乗せてる奴。

 横は肘をついていた奴だった。

 まだ笑顔で見ていた人が近くがよかった。なんで俺は運がないんだ。

 お金取られないかな?

 財布を内ポケットに隠し小銭は筆箱に入れといた。

 ジャンプしろって言われてもこれで何も言われない。


 1時間目から体を動かすという事だったのでグラウンドに出た。

 体操服に着替える時に周りを見ていたがあまり会話はなかった。

 あんまり仲良くないのかと思い、これからの高校生活どうするか悩んでいた。

 

 グラウンドに出て筋肉もりもりの先生が待っていた。

 「まず校庭二十周。10分切れなかったらもう二十周。よーいスタート」

 マジかよ。見た感じ小さなグラウンドだから一周250メートルぐらいで一周30秒ペースで行けば行けるか。

 このぐらいなら序の口だと思う。

 普通に考えたらめちゃくちゃ凄い事だと思うが俺からしたらそこまで難しいことではなかった。

 何故か俺は運動能力が人並み以上だからだ。

 それが不力かとも思ったが違うらしい。

 走りながらクラスの人達はどれぐらいなのか見てみる。

 俺が先頭で二番目に笑顔マン三番目にヤンキー四番目に肘つき女だった。

 運動能力なら勝ててることがとても嬉しかった。

 ここにきてから俺より強い奴しか会っていなくて少し焦りを感じていた。

 でも俺は不力はもったいない。

 だからあいつらは俺よりも全然強いのかもしれない。

 そう思うと萎えていった。

 変なこと考えながら走る。

 あと半周の時タイマーを見ると残り60秒だったので少しペースを落とした。

 このままだと余裕で10分きれると思い少し手を抜きながらゴール。

 流石に息は乱れたが膝をつくほどは疲れなかった。本気を出したら8分きれるかもと思いながら休憩をする。

 俺がついてから20秒後ぐらいに三人とも着くほぼ10分ちょうどだった。

 その次にしたのは筋肉トレーニング。

 これは普通にキツく筋肉が温まっているはずなのに冷たくなっていく感じがとてもキツかった。

 1時間目が終わり水を飲みに行こうとするとクラスのヤンキー君が話しかけてきた。 

 「テメェ、不力はなんだ」

 そう言われて正直に答えた。

 「ない」

 「はぁ?」

 「ないって」

 「じゃなんでここに来てるんだよ」

 「不力も持ってねー雑魚が来る場所じゃねーんだよ!!」

 胸ぐら掴まれながら言われた。

 なんで怒ったの??

 「じゃあなんだあの運動能力は。本当はあるんだろ。しょうもない嘘つくなや」

 「あれは生まれつきぃ」

 「はぁ?」

 「元々運動能力高かったの!!何にも鍛えたりしてないのに」

 やべ。今のは今まで努力してあそこまでの運動能力を手に入れたクラスの人たちを馬鹿にした発言だった。

 「すまん今のはなぁしぃ、」

    ガンッッ

 顔を殴られた。俺は殴られた勢いで倒れてしまった。

 口の中で血が出ているのがわかった。血の味がする。

 人に殴られて血出したのは初めてだった。

 「放課後教室に残れ」

 そう言ったヤンキーはどこかへ行った。

 

 

 

 

      怖!!!!!

 

 

 喧嘩売られた事あるけど今回のめっちゃ怖かったんだけど!!

 なんで最初怒られたの?

 俺だってここにいたくねーよーーーー

 また面倒なことが増えた。

 どうせ喧嘩するんだろうなーー

 その時はボコボコにしてやろ。

 多分される方だと思うけど。

 

 

 戦闘訓練が終わり飯を食う。

 みんなぼっち飯じゃん!!

 なんで?

 仲良くしろや!!

 誰かに話しかけたいがみんな不気味で話しかけづらい。

 てか名前も教えてもらってない。

 早く名前聞かないと。

 これが当分の目標だな。

 午後は悪魔についての勉強や5教科の授業があった。馬鹿つまらなかったが、戦闘訓練よりも楽で良かった。

   意外とみんな授業はしっかり受けていた。

 

 そして放課後ちゃんと教室に残る。

 クラスに俺とヤンキーだけになりヤンキーが席から立ち上がった。

 俺は座りっぱなしだ。

 やべ怖すぎてちびりそう。

 「おい」

 「立てや」

 そう言われ、立ち上がる。

 「おら、運動神経高いんだろ!さっさと殴ってこいや!」

 おい、おい、おい、おい、と言われながら肩を押される。

 肩外れちゃうよ。

 あと運動能力な。

 

 そしてヤンキーは痺れをきらし俺の顔めがけて殴ってきた。

 

     ガン、、、、

 

 血が流れている。そして殴られた頬を抑えた。

      ヤンキーが。

 顔にカウンターをした。

 自分から攻めたら正当防衛が発動しないからだ。

 「不力も持ってねークソ雑魚がーーー!!」

 そう言いながらまた攻めてくる。

 俺は構え、応戦する。 

 相手の大振りのパンチを避けミゾを思い切り殴る。下がった顔に膝蹴りをしようとしたが足にナイフが刺さっていた。

 血が少しずつ出てくる。

 いつ刺した?

 てかナイフを持っていたか?

 てかナイフを喧嘩で使うか?

 ヤンキーは困惑している俺の顔を殴った。

 それに休みの時間に食らった場所と同じ所を殴りやがった。

 かなり痛く血の味がした。血というより鉄の味。

 足に刺さったナイフを取ろうとするが、取る暇を与えぬように距離を縮めてナイフの刺さった方の足を狙ってくる。

 痛みを我慢しながら足を守る。

 不意に顔へのパンチが来て避けれそうになく腕でガードを取った。

 

       グサ、、、

 

 ガードしたはずの腕には激痛が走る。

 見てみるとナイフがまた刺さっていた。

 あまり大きなナイフではなかったからただ刺さっただけで済んだがワンチャン腕を切られている可能性もあったのだ。 

 だが見えた。

 彼の手は何も持っていなかった。だが腕を殴ろうとしている最中にナイフが手から出現していた。

 なんの能力だ?

 ナイフを作る能力?

 物を作る能力?

 物を瞬間移動させる能力?

 全て選択肢はあるが手を使う能力ということにかけて戦わなくてはならない。

 そうか。

 大きなナイフなら腕が切れていたんだ。

 その瞬間不安が俺の体を包み込んだ。

 刺さっている腕と足のナイフを取る。

 ヤンキーは俺の姿を見て笑っていた。

 不気味に感じた。

 転がってあったシャーペンを取り怪我をしていない方の足で地面を蹴り彼の懐までいく。

 俺は笑っているのに腹が立ったので顎にシャーペンを差し込んだ。多分舌までシャーペンが貫通したと思う。

 この行為にはあまり意味はないと思うが俺は少し腹が立っていた。殺され、捕まり、奴隷になって、ヤンキーに絡まれてイライラがマックスになっていた。

 本当なら無視する喧嘩も相手の状態を無視して本気で倒すことにした。

 俺のストレスをここで発散したかった。

 手でまた何かをしようとするヤンキーを押し倒し手を挟んで床にシャーペンを刺す。これなら武器を作ったり瞬間移動させても何もできない。

 痛がっているところでもう片方の手にも刺す。そしてシャーペンで、ヤンキーを刺しまくった。

 背中や首、顔にまで刺していた。この時の俺は正常じゃなかったのだろう。自分が殺されてしまうかもという危険で必死だったのだ。もう死にたくない。あんな経験をしたことのある人間にしかわからない恐怖がそこにはあった。

 「ああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 発狂しながらシャーペンを思い切り振りかぶる俺

 泣きながらシャーペンを刺されているヤンキー

 最後に刺そうとしたが誰かに腕を掴まれた。

 「この辺でやめとこ?」

 そう言いながら笑顔になりながら止めてくれたのはクラス笑顔マンだった。近くにいたのか?

 ふと彼を見るとうずくまって震えていた。

 彼を見た瞬間我を思い出した。体が震える。

 体にある無数の穴は俺がしたのか。

 腰を抜かし尻をつく。

 シャーペンが勝手に落ちた。力が入らなくなっている。

 「二人とも凄い怪我してるから一回保健室行こうか」 

 そう言いながら笑顔マンは俺とヤンキーを保健室に連れて行ってくれた。

 保健室の先生は凄く驚いていた。

 俺はベットに横たわると自分のしてしまった事を思い出してしまった。

 勝負がついているのにオーバーキル。

 顎にシャーペンを刺す。

 手にシャーペンを刺す。

 全て喧嘩ですることではなかった。

 俺は泣いていた。

 なんでこんな事をしてしまったのだろう。

 ムキになったのかもしれない。

 そんな一瞬の気の迷いでここまでする必要はなかったはずだ。

 普通の高校に通っていた時はこんな感じではなかった。

 自分に失望する。

 俺は本当に悪魔なのかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る