死者は語る 世の無常を

【白骨化:が、冬場だと数カ月以上かかる。】


これは……俺は拠点にしている洞窟とは別の洞窟に入ったのだが……そこにあったのは白骨化した死体だった……周りには、白骨死体が使っていたのかもしれない槍と弱々しく書かれた日記帳だった……解読発動……


――――――――――――――――――――――――

Ⅸ&Ⅲ

俺達は長年、"帝国"を苦しめてきた魔物の発生地、"ガリア平原"攻略隊に参加した。平原の半分を占める樹林に到着した瞬間、俺達はハウンドの群れに襲われた。ハウンドは比較的。だが、それは個体で襲われた時の場合だ……俺達が遭遇した群れの強さは"ドラゴンの幼体"にも引けを取らないだろう……俺の記憶が正しければ、ハウンドは森を埋め尽くすほどいた。

冒険者などの志願兵、そして帝国の騎士達を含めた三百人の軍隊。むしろ大群で森に入ったことが致命的だった。俺達、"中級冒険者"達は抵抗することも出来ず、その殆んどがハウンドの胃の中に消えていった……

生存者は俺、治癒魔法の使い手リフィア、神官見習いのハート、"紫鰐"の異名を持つシフォン爺、そして帝国騎士団長の"ルフト"の五人だけだった。ルフトは酷く落ち込んでいた。長年競い合ってきた騎士団は自分以外は全滅……俺のパーティーで敵意感知を持っていた索敵役のバニアンも今頃は死神とダンス中だろう……糞が……

【ここでページが破られている。】


Ⅸ&Ⅹ+Ⅲ

最初に死んだのはシフォン爺だった。ゴブリン達に滅多刺しにされて、恐らくは即死。敵意感知が無い集団など簡単に全滅する。

次に死んだのはリフィアだった。恋人だったバニアンを失い発狂。何処かに走り去って行った。助かる可能性はほぼ無いだろう……こうして、俺達は回復役を失った。

そしてこの日記を書いている最中にハートが死んだ。死因は餓死。エリート集団である神官に任命された若き天才だった……

生存者は俺とルフトだけになった……。俺達は寒冷耐性あるいは寒冷無効を持っているのに、何故か寒さに耐えられない……

【追記】ルフト曰く、


Ⅸ&Ⅹ+Ⅳ

俺はハートの死体を処理するために湖に行くことにした。

「仲間達の供養か?」とルフトが言った。

帝国で老若男女問わず人気があった騎士団長はもう存在しないのだろう……ひどくやせ細った身体には、あの頃の覇気は一切感じられない。

人族の死体は適切な供養しなければ一定の確率で魔物アンデット化するためだ。かつての仲間の変わり果てた姿を見たくないというのもあるが、この状況で敵を増やす可能性を高めるのは愚行でしかない。

「手伝うよ……死んだ後に恨まれたくない……」とルフトが言った。

「俺の仲間はそんなこと気にしない。」と反論する形で返した。冒険者である以上、何時何処で死んでも誰も文句は言えない。あの大声で有名なシフォン爺ですら、最期は何も言わずに死んだ。

「……冒険者は偉大なのだな……私はそんなに簡単に割り切れない。死ぬのが怖い……怖くて怖くて……」

俺は「そうか。」としか言えなかった……言った後に気づいたが、冒険者と帝国騎士団には大きな死生観のギャップがあるのだった。

それにしても、咳が止まらいな……


【血がページに飛び散っている。】


Ⅸ&Ⅹ+Ⅴ

翌日ルートが自殺しいた……湖にやせ細った甲冑帝国市民の英雄が浮かんでい

俺が慰めて■■やらなかったからだろ……あの時ルートは酷い顔をしていた。

その報いだうか?俺の番が来たのだ……吐血が止まらない……

もし誰かの日記を読んでいるのなら……俺の槍を使っ■■てほしい……

俺は冒者としも人としてもなまくらだったが、こいだけは……

……あと俺の死体は……燃し……て……くれ……頼……だ…………


――――――――――――――――――――――――

まず俺は日記に書かれた単語の気になる部分を鑑定で確認していく。


≪ガリア帝国:人族ホモ・サピエンスの国家最強と言われた国。ガリア平原攻略に失敗し、内戦が始まる。同時期に魔物の大量発生が起きてしまい滅んだ。≫

≪冒険者:魔物を狩ったり、人の依頼を引き受け生計を立てる者。レベル1~19までを下級冒険者、レベル20~39を中級冒険者、レベル40以上を上級冒険者という。≫


最後のページに残されたのは、痛ましい吐血の跡と日記の主の名前、"ヴィクター・アガレス"の文字だけだった……俺は白骨死体を火球で燃やし尽くした。そして銀の槍を右手で持ち上げて宣言した。


「俺はこの槍と必ず生き残ります……御休みなさい……」


――ありがとう


≪シークレットスキル『死者の加護』を獲得しました。現在個体名"トモヤ・ハガヤ"に『死者の加護』を公開することができません。≫


洞窟から出ると茂みからハウンドが一匹出てきた。俺はヴィクターさんの槍を構えるが、ハウンドは臆すること無く俺の右手に噛み付いていた。


「いっ……」


今回は激痛に対して声を出すことは無かった。そもそも槍を初めて持った俺とハウンドでは戦闘力に差があるのだろう。というか前回、ハウンドに噛まれた時よりも出血が止まらない……恐らくスキルの効果だ……


≪熟練度が一定に達しました。スキル『寒冷耐性(レベル2)』が『寒冷耐性(レベル3)』に上昇しました。≫


「か、火球!!」


噛まれている右手から火球を作り出す。当然、ハウンドの口内に火球が生成され、とんでもない速度でハウンドは燃えていく……やはり魔法の威力は段違いだ。黒焦げになったハウンドの死体を投げ飛ばす。だが、肉の焼ける匂いに周囲のハウンドを呼び寄せてしまったようだ……


≪熟練度が一定に達しました。スキル『苦痛耐性(レベル2)』が『苦痛耐性(レベル3)』に上昇しました。≫


噛まれた痛みが少し引いたが……まだ出血は止まらない。

茂みから複数のハウンドが現れる。現れた数は三、無論油断できる数では無い。


「火球!!」


ハウンド達は難無く火球を避けた……いや、……ハウンドは連携攻撃ではなく一体ずつ噛みに来たようだが、銀の槍はハウンドの身体を貫いた。そこまで舐められても困る。


≪熟練度が一定に達しました。スキル『貫槍技術』を獲得しました。≫


「火球!!燃えろ」


今度はよく狙って火球を放った。三体の内、一体は槍で絶命し、残り二体は燃え尽きたのであった。何とか勝てたが……右腕の出血がまだ止まらない……確か


「簡易治療発動……」


簡易治療を発動する。数分間かけ続けると、出血が止まった。槍で仕留めたハウンドの死体を引きずりながら、俺は拠点の洞窟に戻るのであった。因みに焚き火で焼いていた肉は焼き目すら付いていなかった。


――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:C

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:D

防御力:D

魔力攻:E

魔力防:E

走 力:C


現在使用可能なスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『火魔法(レベル1)』火を操る魔法。

『寒冷耐性(レベル3)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『考察(レベル4)』物事を予想し、記憶力や思考力を高める。

『苦痛耐性(レベル3)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。←new

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。←new ※本人は獲得したことに気づいていない(気づけない)。


現在の持ち物

銀の槍(無名)

ハウンドの肉、ハウンドの皮

ヴィクター・アガレスの日記帳

毛布(ハウンドの皮をつなぎ合わせた物)

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