第38話 勝利! マンティコアウーマン亜子

 クソデカテディベアの右拳を私とキマイラ紀米良きめらさんが受け止める。この獣臭い筋肉が最大限に役立っていると思う。もし少しでも力負けすれば、私達は学校ごとぺしゃんこだ。



「みんなぁ、私達が支えている内に、早く!」

「ッシャア!」

「おりゃあ」

「闘魂こやーん!」

「ムッフー」



 モンスター達が次々と悪魔テディベアを攻撃する。バジリスクは頭部を石化、リザードマンは水のバットで胸を殴打、炎狐は敏感な部分を燃やし、アイス・ビーストは下半身を凍らせた。



「オ、オ、オノレェ!」



 悪魔テディベアは口と目だけ必死に石化をはね返し、左拳を振り上げる。マッチョなモンスター2匹でやっと支えられる拳が、ヤバイ!



「させるかぁ!」



 リザードマンとバジリスクと炎狐とアイス・ビーストがワンチームになり、左拳を受け止める。皆の表情は硬く、腕がプルプル震えている。本当にギリギリの戦いだ。



満地まんち先生、ここはあたし1人で支えるから、先生がとどめ刺して!」

「えっ、でも……」

「あたしは大丈夫だから。早くしないと、あっちがもたないよ!」



 左の拳を支えている4匹の顔が青ざめている。確かに、これ以上は引き延ばしできない。



「わかった! やるわ!」



 右の拳をキマイラに預けてコウモリの翼で飛んだ。この悪魔テディベアの弱点はどこか。やはり、えぐいけど、目つぶしが有効か。



「マァァァァァァァァン!」



 右腕に全神経を集中させる。腕回りの筋肉が大木のように盛り上がり、力強さを増していく。



「パァァァァァァァァンチィィィィィィィィ!!」

「ずぼああああああああああああああ!」



 マンチパンチの衝撃で、悪魔テディベアが吸収していた生徒達がバラバラにほどけていった。生徒達はグラウンドに落ちて眠りこけている。私達の姿見られなくて良かったぁ。



「ひっ、ひえええ、お、お許しくだせぇ」



 後に残ったのは、綿毛が抜けてしわしわの子熊だ。



「氷けにしましょうか」

「海の底に沈めちゃおうぜ」

「燃やし尽くすべきだ」

「石にしましょう」

「再生できないように破壊しつくすだけよ」



 モンスターに慈悲はない。子熊はべそをかきながら、私にすがりついてきた。そんなうるうる瞳に騙されないよ。



「歴史上の拷問ごうもん、全部やりましょうか?」



 その後、悪魔テディベアの姿を見た者はいない……。



(完)

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