第7話




「そういえば、この聖域って今まで使ったことないや。」



森の生活にも慣れて、魔法も使えるようになった頃、蓮也はふとそのスキルの事を思い出した。



『聖域?聞いたことも無いスキルだわ。』


「うーん、とりあえず展開だけでもしてみるか。」


「【聖域】!」



すると、蓮也の周りを囲むように半径5m程で半透明のドームが現れた。



「これが、聖域か。」


『防御系のスキルみたいだし、何か魔法でも当ててみる?』


「そうだな、頼む。」


『それじゃ、行くわよー!』



いつか見た炎の槍が現れ、蓮也の元に勢いよく飛び出した。 しかし、槍が円に触れるとその槍は音もなく消滅したのであった。



「おぉ、ちょっと驚いたけど、ほんとに攻撃通さないんだな!」


『凄いじゃない! しかも円の中は怪我も治るんでしょ?』


「みたいだな、さっきより体も軽くなってるし、疲労回復もしてくれるみたいだ。」


『寝る前に展開しておくと目覚めも良くなりそうね!』


「あぁ、今晩でも試してみよっか。 それより、そろそろレベルを上げてみたいんだが…」


『そうね、聖域を展開してれば安全だし、一緒に狩りにでも行く?』


「そうだな、いつもリリアに狩って貰ってるし。」


『それじゃ、早速行きましょ!』



蓮也とリリアは早速狩りを始めるのであった。暫く歩くと、大柄な成人男性程のオークが居た。



『ええ、聖域を展開しておいてね。』


「あぁ、【聖域】。」



半透明の膜が蓮也を覆った。



「よし、それじゃ、行ってくるよ。」


『ええ、危なくなったら助けに入るから安心してね。』


「助けなんか要らないよ、と言いたい所だが、よろしく頼むよ。」


『ふふっ、任せて。』



木の影に隠れ移動している蓮也は、徐々にオークに近寄り、射程距離まで近寄った。



(よし、この距離なら外さない。)



蓮也は土の槍を形成し、狙いを定め槍を放つ。



「ブヒィッ!!!?」



見事オークの頭を貫き、初めての狩りは大成功で膜を降ろした。 聖域を解き、オークの亡骸に近寄る蓮也。すると後ろからリリアに声を掛けられた。



『蓮也、油断しちゃダメよ?』



リリアの声の方に振り向くと、大きな蜘蛛がバラバラになっていた。



『獲物を狩った後は気が抜けちゃうから1番狙われやすいのよ。 この蜘蛛は気配を消すのが上手だから、気をつけてね。』


「あ、あぁ、ありがとうリリア。 全然気づかなかったよ。」


『良いのよ、それより早く帰って、初めて蓮也が狩った獲物を食べましょ。』



(ほんと、リリアには助けて貰ってばかりだな。)



いつか、必ず恩返しをしようと心に誓った蓮也であった。それから数日経ったある日の事、森での生活にも慣れた蓮也はある問題に当たってしまった。



「服、ボロボロになったなぁ。」



転生した時、女神が与えた服も、上は裸でズボンも膝丈のダメージパンツになっていた。



『服ってないとダメなの?』


「うぅん、そろそろ森を出ようかと思ってたから、人と会うのにこの格好じゃな…」


『ふ〜ん、よく分からないわ。』


「しかも、最近は朝晩冷え込むからな。風邪をひかないとはいえ、ズボンがまだ無事なうちに新しい服を手に入れないと。」


『そうね、レベルも上がっただろうし、そろそろ森の外に出てもいい頃合いかもね…外に、か。』


「リリア?」


『……あ、あのね、蓮也。 前に言ってくれた事、覚えてる…?』


「一緒に行こうって奴か?」


『うん、でもやっぱり、私が一緒じゃ蓮也に迷惑をかけると思うの。』



そう言うリリアの声は震えていた。



『だ、だからね、森の外まではちゃんと、送り、届けるから、そこで「リリア」』



リリアの話を遮る蓮也。 笑顔だが、目は笑っていなかった。



「俺は君に、言葉で言い表せない程感謝してる。 迷惑とか、そんな事言うなよ。」


『蓮也…』


「リリアが行かないなら、俺もずっとここに居る。 リリアが独りになるからじゃなくて、俺が一緒に居たいから。」


『…』


「旅をしたい理由も、この世界を楽しみたいからだし。でも、リリアが居ないと楽しくないからさ、これからも一緒に居てくれよ。」



そう言って微笑む蓮也に、静かに頷くリリアであった。




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