018 バスターズの祝福
「なー、名前なんて言うん? 俺は城ノ内!」
「陣川。陣川龍斗だよ」
「陣川って言うんか? 龍斗って呼んでもええの?」
「どっちでも」
「ほな龍斗、浪速バスターズに入ろうや! あのビームやばすぎやで!」
「せや、一緒に戦おうや! トーキョーモンは嫌いやけど龍斗は別や!」
「入ってくれたらまずいたこ焼き屋の見分け方教えたるで? どや?」
京都駅の広場で、龍斗は浪速バスターズの面々から強烈な勧誘を受けた。蟻の子すら通さぬほどの密度で包囲され、全方向から勧誘される。飛び交う高速の関西弁に圧倒されて、龍斗の思考は軽いパニック状態に陥っていた。
「そんな皆でワーワー言うても伝わらんやろ」
千尋が待ったを掛ける。
「で、どうかな? ウチらのクラン、入ってみーひん?」
「ありがたいけど、俺、普段は東京にいるから……」
「だったら引っ越ししてきたらええやん」
千尋の発言に「せやせや」と周囲のバスターズメンバーが湧き上がる。
「最近のキタはすごいで」
「キタ言うても分からんよな? 梅田のことやで」
「ちなみに難波はミナミや、こっちは分かるやろ?」
「梅田は開発進んでてなぁ、ヨドハシのあたりとか栄えまくっとるで」
「でもやっぱミナミが面白いわ。大阪におったらミナミ行き放題やで」
「一緒に黒門いこや、あの近くに美味い飲み屋あんねん。立ち飲みやけど」
またしても全方位から口々にアピールされる。
(大阪の人間ってこんなに積極的なのが普通なのか……?)
これは誤った認識だ。
大阪の人間、特に若者は、それほど積極的ではない。バスターズの一同が鼻息を荒くして群がっているのは、龍斗がそれだけの活躍をしたからだ。彼のおかげでバスターズのメンバーは誰一人として命を落とさずに済んでいた。だからこそ、感謝の気持ちも込めて上機嫌で勧誘している。
「申し訳ないけどまだ引っ越しする気はなくて……」
「そっかぁ、残念やなぁ。で、龍斗は京都に何しにきたん?」
千尋の問いに「観光」と短く答える龍斗。
「大阪に行く予定はある?」
「元々は大阪に行く予定だった。京都は少し寄り道しただけで」
「ほんならちょうどええわ! ウチが案内したる!」
「いいの?」
「ええよー! どうせ今日暇やったし! クランに入らんでもええから、一緒に大阪ぶらつこうよ!」
「分かった」
「さっきも名乗ったけど念の為に言っておくと、ウチは富田千尋。1回生や。千尋って呼んでなぁ、りゅーと」
「おう」
「よっしゃ、ほな大阪に行こかー! 魔物のせいで新幹線以外はストップしとるらしいから、ちょい高いけど新幹線で行くで――みんな、あとの処理は頼んだで。さっちん、今回の報酬はいつもの口座にお願いね」
千尋はテキパキ指示を出すと、龍斗の手首を引っ張って新幹線のホームに向かった。
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