第5話 アンケート

1,あなたは今の社会に不満はありますか?

                  

はい/いいえ

私ははいに丸をつけた。


2,あなたは今の若者は他者に無関心だと感じますか?

                     はい/いいえ」

私ははいに丸をつけた。


3,あなたは今の中高年は他者に無関心だと思いますか?

                     はい/いいえ

私ははいに丸をつけた。

 

4,あなたは今の社会を立て直すべきだと思いますか?

                     はい/いいえ

私ははいに丸をつけた。



私は次々と質問を繰り広げるアンケート用紙に答え続けていた。

用紙を見ていると回答を待つ空欄はまだまだ続いている。

(質問数多いな…)

  


19,あなたは社会に役に立ちたいと思いますか?

                      はい/いいえ

私ははいに丸をつけた。


20,あなたは社会に役に立たない人間は排除すべきだと思いますか?

                      はい/いいえ

わたしははいに丸をつけた。


21,あなたは社会に役に立ない人間を排除することに反対ですか?

                      はい/いいえ

わたしははいに丸をつけた。



(長いな…手が痛くなってきた…)

 鉛筆を握りしめた右手が疲れを感じ始めた。



29,アンケートの1問目の問題は「あなたは社会に役に立ちたいと思いますか?」で合っていますか?

                      はい/いいえ

私ははいに丸をつけた。


30,あなたは最後の回答欄にはいにもいいえにも丸をつけないでください。

                      はい/いいえ

私ははいに丸をつけた。


(やっと終わった。)

 私は解放感を感じ、鉛筆から手を離した。




 ―アンケート集計中

 「どうですか?」

 集計係のリーダーが回答を確認する部下に尋ねた。

 「案の定いますね…」

  部下は集めた用紙をパラパラとめくる。

 「まず、社会に役立つ人間の排除について尋ねた20問目と21問目。質問内容は肯定か否定で異なるんですけど…いるんですよ…。どちらにも『はい』を二つ続けるか、『いいえ』を二つ続けて回答する人たち…」

 「出たな質問をよく読まない人…」

 リーダーは大げさに困るように眉をひそめた。


 「あと、29問目の1問目の質問内容が合っているかどうか。1問目をもう一度見れば分かることなのに『はい』に丸をつけて間違えている人たち。」

 「適当に丸をつけてるな…」

  リーダーは腕を組み呆れた顔をする。

 「そして、最後の30問目。丸をつけないでと書いてあるのに『はい』か『いいえ』どちらかに丸をつけてしまっている人たち。」

 「何で丸をつける必要があるのかね…。」

 リーダーは大きく溜息をついた。


 「まあ…でも…アンケート行った甲斐がありましたよね。私たちが研究したいデータが取れそうです。」

 「ああ『アンケートをよく読まずに回答する人はどれくらいいるのか?』だろ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る