39日目 夜

多くのことに決着がついた……なんて、大仰な書き出しにする必要は無いか。気付けば、前回の日記から12日も経っている。日記ってなんだろうな。


 この12日間で起こった大きなことは主に2つだ。ボルツは仇討ちを終わらせ、セリーナとルーは鉄道ギルドからの依頼を達成した。何度聞いても、真面目そうなセリーナは兎も角、ルーがそんなお堅い感じの仕事受けてたの信じられないな。いや、戦闘してる時は確かに真面目なんだが。


 戦闘といえば、最近は随分楽になったように感じる。というのも、メンバーのほとんどが複数の敵を一度に攻撃する手段を確保したのだ。一度戦闘が始まり、機先を制することさえ出来れば、酸やら炎やら散弾やらがこれでもかと叩き込まれ、敵は為す術無く撃沈する。それでも生き残った連中にトドメを刺すのが、アタシの仕事になっていた。その仕事自体もそうそうあるわけではないが。


 無闇に暴力を振るわないで良いのは、アタシにとって好都合だが、一人だけ楽をしているような気分にさせられて、少し申し訳ない。それでも皆は何も言ってこないし、アタシの分だけ報酬を減らす、みたいなこともしていないから、ありがたいことこの上ないが。


 ヴィルマに関しては、ようやく足取りが掴めたといったところだ。奴隷商人に連れられ、ボスンハムンに渡ったらしい。生憎ボスンハムンに着いてもその奴隷商人の情報は得られ無かったが、峡湾を探索していけば見つかるかもしれない。今までは仲間達の目的に付き合っていたが、これからはアタシの目的に付き合って貰うことになる。早く見つけ出して、安全な場所で保護して貰わなくては。


 それはそうと、ボスンハムンに着いてからある依頼を受けた。鍛冶師を護衛してほしいというものだ。


 この旅の道中、アタシ達は何度か放浪している人々や、護衛対象を連れることがあった。しかし、アタシ達の目的を優先させてもらうという条件付きでだ。その結果アタシ達と一緒に邪教団のアジトに潜入したり、奈落の魔域に挑むことになったりもした。しかし運良く彼らが被害に遭うことはなく、全てを送り届けることが出来ている。


 とはいえ、護衛として雇うには不安が付きまとうだろうに、鍛冶師はそれでも構わないと付いてくることになった。恐らく、アタシ達はこの後峡湾の魔域を攻略し、主を倒し、また道中で受けた依頼を達成するだろう。峡湾での探索が上手く行けば、そのまま雪森を経由してオクスシルダに向かい、あろうことか凍原経由でようやくエルヤビビに到着する予定だ。彼には酷く苦労をかけるだろう。なるべく気遣ってやりたい。


 そういえば、魔域の中でまた守人カティアに会い、彼女の人生のifを見ることになった。その途中、彼女が殺害した守人キャラウエイ――――――正真正銘のクズだとアタシも思う――――――が不用意に前に出て、アタシ達の攻撃を容赦無く食らう場面があった。まあ、魔域の中のことだし、皆殺すつもりはなく、今までのカティアへの仕打ちを考えてお灸を据えてやろうという気持ちだったのだろうが。


 しかしそんな中モッスが微妙な表情をしていて、少しやり過ぎたかもしれないと思った。別に殴ったわけではないが、アタシも罵倒をキャラウエイに浴びせたわけだし。


 モッスは魔域の中のことも真摯に受け止めてしまう。書くつもりだという本の中にも、魔域の中で見たことを書くと言っていた。キャラウエイを貶めたとか言われて、バッシングを食らわなければ良いが、どうなることやら……(眠気に負けて船を漕いでいたのか、ここから先は意味の無い言葉が書き連ねられている)

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