第2話 あ、続けるのですね?

第1話:あ、続けられるのですね?



「アルフレッド様、あのオジサンが私を睨んでます。私、怖くて…」


ここで件の男爵令嬢と思わしき方が声を上げました。殿下の背後に半ば隠れるようにしながら、男心をくすぐるような発言を繰り返す…イラっとします。あろうことか、お父様をオジサン呼ばわりして…。この様な事態なのに空気を読めないのは流石としか言いようがありません。『ヒロイン』は伊達ではないようです。


「ば、アリス!何を言い出すんだ!グラッティ公爵、すまない。アリスにも悪気があった訳ではない、許せ」


慇懃に殿下がお父様に声を掛けましたがお父様はそれを無視して殿下に問いかけます。とても静かな声でした。


「……殿下。その令嬢が着ているドレスは私が娘の為に作らせたものです。ですが、何故、その令嬢が着ているのでしょうか」


その声に殿下の体がビクッと跳ね上がりました。私の方からはお父様の表情は見えませんが、どうなさったのでしょう。王家に使えているとはいえ、傘下の貴族が個人的に依頼した物を王権を振りかざして勝手に取り上げるのは最悪な所業です。これが通ってしまうと独裁になってしまいます。法治国家を自称する我が国では特に。無論、今日、このような場所では最悪の一言です。国王の誕生祭ということもあり、友好関係にある近隣諸国からも多くの来賓を招いているのですから。


「だって、だって、このドレス、私の方が似合うってアルが言ってくれたんだもの!それにエリシャ様は私に色んな嫌がらせをしたのだから、これは慰謝料です!」


はしたなく大声を出す男爵令嬢に周囲は冷ややかな目を向けますが気づかないのですね。話の内容はどうであれ、こんな公の場では大声を出すのはエレガントではないのですから。ですが、気になる単語が出ました。私が彼女にどんな嫌がらせをしたというのでしょうか。しっかりと聞き出さなければなりませんね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る