第18話
無事に街へ着くとブルクスとクマズンはギルドへと向かった。
俺とクーチは一度宿に荷物を置いてくる事にして宿へと戻った。
「傭兵ギルドまで来て声を掛けてくれれば打ち上げの会場に案内しますよ!」
ブルクスに軽く手を振って別れる。
宿の扉を開けると女将さんが居た。
「おかえり!大丈夫かい!?怪我はないかい?!」
ペタペタとクーチを触って確かめる女将さんに苦笑しつつ応える。
「大丈夫だ。クーチも俺も怪我はない。心配をかけたな。」
「良かったよ~。あんたはともかくクーチちゃんが心配で心配で。」
そう言って女将はクーチを抱きしめる。
「ありがとうございます女将さん。」
クーチも抱き返すとどこか女将さんも満足そうだ。
「俺は荷物を置いてくるからゆっくりしてるといい。」
「はい。」
クーチの杖を預かって部屋へと戻りバックパックを下ろす。
そういえば素材の査定もしてもらわなきゃいけないな。
とりあえず部屋から出て一階へと降りる。
「ハントさん!行きましょう!」
「ああ。女将さん、今日は外で食べてくるから夕飯は大丈夫だ。」
「あいよ!もし遅くなるようだったらカウンターのここに鍵を置いとくから持って行っておくれ!」
「ああ、分かった。」
女将さんにいってきますと声を掛けて宿を出る。
「ハントさんありがとうございました。」
歩きながらクーチが話しかけてくる。
「少しは気が晴れたか?」
「はい!」
「そうか。」
少し明るくなった笑顔でこちらを見てくるクーチにうまくいって良かったなと思う。
ギルドに入るとブルクスがカウンターの端に居たので声を掛ける。どうやら待っていてくれたようだ。
「ハントさんクーチさん、お疲れ様でした。」
「お疲れさん。」
「今回の報酬をお渡ししますね。まず、バンデットレイヴンの目撃情報で3000ドルグ、作戦の立案で5000ドルグ、討伐への参加、討伐への貢献で20000ドルグ、合計で28000ドルグになります。クーチさんの分は目撃情報で3000ドルグ、討伐への参加、貢献で10000ドルグの合計13000ドルグになります。それぞれタグをお出し下さい。」
タグを出してドルグを受け取る。
「明日にでも、バンデットレイヴンの追加情報が纏められると思うので興味があれば聞いてください。それじゃあ行きましょうか。」
「ああ。案内を頼む。」
「ははは。案内と言っても荒鷲団の拠点に行くんですけどね。」
そう言って歩き出す。
ギルドを出て北へと進む。
「荒鷲団はこの街の領主様と契約していて、領主館の側に拠点を構えています。その1階が食堂になっているのでそこで打ち上げをするそうですよ。荒鷲団の奢りだそうです。」
そんな事を聞きながら歩いていると正面に大きな建物が見えてきた。
4階建てだろうか。白を基調にしたシンプルだが立派な建物だ。
「あれが領主館です。そしてあっちが荒鷲団の拠点ですね。」
領主館の右手に、茶色い木造の建物が見える。
3階建てで頑丈そうな造りになっている。一階の入り口はウエスタンドアになっているようだ。
「1階が食堂と荒鷲団への依頼や相談事の受付、応接スペースになっています。2階は住み込みの団員達の部屋ですね。3階は団長や幹部たちの執務室兼部屋ですね。裏手には訓練場もありますよ。」
「随分詳しいんだな。」
「ええ、私はもともと荒鷲団の所属ですからね。傭兵ギルドには出向という形です。領主に雇われている以上、連携を密にする必要がありますから。」
「なるほど。」
なんでもないようにサラっと返事をしてブルクスは中へと入っていく。
「ようこそ荒鷲団の拠点へ。」
中に入ると思ったよりも広々としていた。
すでにクマズン達はテーブルについて飲み食いしてるようだ。
「よう!こっちだ!適当に座ってくれ!」
ちょうど3人分席が空いていたのでそこに並んで座る。
するとすぐに、ビールと果実酒が目の前に並べられる。
「よし!揃ったな!全員酒は持ったか?持ったな?よし。今回も無事に終えられたのは全員のお陰だ!俺たちの勝利に乾杯!」
「「「「乾杯!!!」」」
「よっしゃー!好きに飲んで食ってくれ!」
クマズンの号令でゴツンゴツンとジョッキを打ち鳴らす音があちこちで響く。
「ハントさん、お疲れ様でした。」
「ああ。クーチもな。」
クーチと乾杯してゴクゴクと喉を鳴らす。
薬草煙草に火をつけて煙を吐き出す。
適当に飲み食いをしながら軽く回りの傭兵と言葉を交わす。魔弓すごかったなと褒められると少しいい気分になる。神様にお願いして良かった、神様ありがとうと心の中で礼を言う。
そんなこんなしているとクーチが頬をピンク色に染めてこっちを見ていた。
どうやら少し酔ったようだな。
クーチ用に果実水を頼んで、新しい煙草に火を付ける。
「ふぅ~。いろいろあったな。」
「いろいろありましたね。」
「それでこれからの事は決めたのか?」
「はい!決めました!」
ガタリとクーチが立ち上がると、ビシと俺を指さす。
「私は!ハントさんに一生ついて行きます!」
ビシっと指を突き付けて大きな声で発したため、周りもシンとなる。
ぷかりぷかりと煙を吐き出しながら「そうか」と答える。
クーチは周りの様子に気づいたのか顔を真っ赤にしてあわてて椅子に座る。
その様子に思わず吹き出して「あっはっはっは」と笑ってしまう。周りも微笑ましいものを見たという感じでガヤガヤと元の喧噪に戻っていく。
「もー!笑わないで下さいよ!」
「すまんすまん。」
ふぅ~と大きく息を吐き出して笑いを落ち着かせる。
「そうか、ついてくるか?」
「はい!」
「分かった。これからもよろしく頼むよ。」
うれしさと照れ隠しにビールをゴクゴクと飲み干す。
「さて、戻るか。クマズン!俺たちはそろそろ帰る!また一緒になったら宜しく頼む!」
「おう!お前たちなら歓迎する!」
「ブルクスもありがとう。またギルドで。」
「ええ。お疲れ様でした。」
傭兵達にかるく手を振ってふらつくクーチの手を引いて宿へと戻った。
宿の部屋へ戻る。
「先にシャワー使っていいぞ。」
「はい。」
まだ顔を赤いクーチをシャワーに向かわせて荷物の整理をする。
バックパックから討伐部位と薬草と毒草の入った革袋出してまとめておく。
クーチのバックパックも取り出して、着替えがそのまま入っている事に気づく。
「ここにバックパックを置いておくから着替えるんだぞ。」
まるで親父のようだなと思いながら、シャワー中のクーチに声を掛けておく。
腰のベルトを外して椅子に腰かけて煙草に火を付ける。
ふぅーと息を吐きながらタグを掴んでステータスと呟く。
名前: ハント LV:6
ランク: 1
性別: 男
種族: 人種
スキル: 魔弓術 短剣術 体術
身体強化 気配察知
隠密行動 鷹の目
魔力操作 職人の目
所持金:78200ドルグ
レベルが6になっている。
どうやら魔物よりもバンデットレイヴンの方が経験値が多かったようだ。
タグを仕舞って、煙草を吸う。
レベル10まであと4か。
バンデットレイヴンの追加情報を聞いたら迷宮都市に行くのもいいかもな。
そんな事を考えながらぷかぷかと煙草を吸う。
「お待たせしました。シャワーどうぞ。」
「おう。先に寝てていいからな。」
シャワーを浴びて、着替えて出てくるとクーチはすやすやと寝息を立てていた。
俺もベットに入るとすぐに眠気が襲ってくる。
ああ、女将さんの弁当食べるの忘れてたな、そんなことを考えながら眠りについた。
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