チヒロ、引きこもる

 翌日。二人はチヒロの部屋で宿題をしながら話をしていた。


 チヒロが言う。

「さらに、学校で顔を合わせ辛くなっちゃった。

 女子同士の力関係って、なんか怖いよね?

 ミサキとカエデの威圧感すごかったな。

 どの女子グループにもあんな感じのリーダーがいるの?」


「全部ではないと思うけど、似た感じの子は結構いるよ。

 非常識を常識にして当たり前のように押し付ける感じ」


「……女子をやっていける自信がないよ」


「その体じゃ、男子もできないよね?」


「そうだけど、ナツキがいてくれればそれでいい……」


「嬉しいこといってくれるね。

 昔のチヒロが戻ってきたみたい」


「ナツキがいないと何もできる気がしないよ。

 そう言えば昔もそんなかんじだったね。

 結局グループはどうなったの?」


「とりあえず、抜けておいた。

 男子からも女子からもね」


「大丈夫なの?」


「まぁ、緩い関係だからね」


「そうなんだ」


「ミコトとシノは、チヒロにこだわってたけどね」


「どうして?」


「好きだから」


「は?」


「気づいてなかったの?」


「うん。まったく」


「てか、ミコトとは女子になって全く会話してないよ?」


「ミコトがチヒロに近づけないように僕がブロックしてたからね。

 友情と愛情って複雑なんだろうね。

 ミコトってさ、今まで特定の好きな子がいなかった感じなんだよね。

 チヒロと遊ぶ方が楽しいって思ってたんだとおもう。

 で、チヒロが女子になって気になり始めたんじゃないかな?

 シノは、チヒロのこと思い続けてたけど、

 チヒロがミサキのことが好きなの知ってたから、告れずにいて、

 チヒロが女子になっちゃったから複雑な心境になってた感じだね」


「なんだか気まずいね」


「僕はチヒロを誰にも譲る気はないから」


「なら、私を甘やかしてよね。

 夏休みは、引きこもるからさ」


「わかった」

 ナツキは立ち上がると、チヒロの隣に座わった。

 チヒロの頬に両手を当て、自分の方に顔を向け、優しく口づけをした。

 チヒロは突然のことで、赤面し、何も言えなくなった。


「可愛いよ。もう一回するね。僕を受け入れてみて」


 ナツキはチヒロに口づけをする、チヒロはナツキを受け入れ、甘いキスを交わした。


「チヒロ。愛してる」


 チヒロは下を向いて黙り込んでしまった。


 ナツキは、チヒロの背後に股を開いて座り、抱き寄せると、服の上からチヒロの胸をもみしだく。シャツとキャミソールをたくし上げ、胸をあらわにすると、隆起した乳首を指で愛撫した。ナツキは片手をチヒロの下半身に忍び込ませ、局部にふれた。

 チヒロは、ナツキのことが愛おしくてたまらなくなっていた。



……



 二人は、宿題の続きに精を出していた。


「私、女だね……メスだよね……メスとして発情しちゃったんだよね?」


「僕はオスとして発情したね。辛うじて本番は避けたけどね。危なかった」


「危なかったよね。体の変化もまだ終わってないし……」


「でも、お互い、大人の体として完成しつつあるね……」


「……うん。まさか女としてあんな体験しちゃうとか、恥しすぎる。

 しかも、ナツキにたくさんエッチなことされちゃった」


「僕も、チヒロが、まさか僕にアレしてくれるとは思ってなかった。

 自分で処理するつもりだったしね」


「もしかして初めて?」


「うん」


「そっか、私もだよ」


「知ってる。チヒロにそこまでの勇気はないしね」


「ナツキのアレって私のよりおっきい気がするのだけど気のせいかな?」


「同じくらいになるって聞いたから、気のせいなんじゃない?

 それに、そんなに間近でみたことないんでしょ?」


「そういえば、そうだね、一定の距離より近づいたことはなかったし」


「男子のあれに興味津々?」


「まさか男子のあれ見てドキドキするとは思わなかった……」


「そうか……今夜、チヒロにもらったエロ本とDVDみて試してみようかな」


「一緒に見る? 手伝うよ?

 私される側視点で見ちゃうのかな?

 超気になる」


「あはは。何、この彼女? ありがたすぎるね」


「人間関係とか妙に気弱になってダメダメだけどね……。

 エロいことくらいしか力になれないよ。

 ナツキにしてもらってばかりで、自分でも情けないよ」


「体の変化の副作用かな?」


「でも、昔はそんな感じだったよね?」


「だね、昔に戻った感じはすごくしてる」


「私、中学生の時は、かなり無理して人と向き合ったからな……。

 それで、ミコト達と仲良くなって、その流れだけだし」


「男子の意地的なやつ?」


「うん、まさにそれ。

 すでに今の私にはない。

 引きこもりたい。

 こわくて、うかつに女子と友達にはなれない。

 ミサキとカエデは完全に別人だったしね」


「休み時間は僕のところにきなよ。

 トイレの外までならついて行ってあげるからさ。

 着替えは頑張れってしか言えなけど」


「もう、それでいっか……。

 ボッチでいいや。

 ナツキがいればリア充だし」


「余り者同士で気が合う子と出会えるかもだしね」


「うん。そうする」

 

 ナツキがスマホを手にとって何かを確認する。


「何みてるの?」


「グループチャットの履歴とか、着歴とか」


「そう言えば最近、私のスマホ静かすぎるな」


「あー、それ、SIM交換しておいた。

 番号変わってる。

 両親には番号伝えておいたよ。

 あと、通信アプリ、新アカウントで作り直した」


「なんてことをしてくれてたの?」


「だって、困ってたじゃん。

 一番楽な方法だよ?

 あのままだったら、ミサキからも連絡来てたと思うし」


「……たしかに。

 でも、私の女子人生は、ボッチスタート確定だね……」


「チヒロの場合、男子時代の交友関係はストレスの元にしかなりそうにないから、リセットした方がいいよ」


「まぁそうか……」

 

「んー……。めんどいことになってるね」


「なにが?」 


「チヒロを取り巻く恋愛模様」


「あれ? グループ抜けたんじゃないの?」


「チヒロの連絡先は僕しかしらないから、僕に連絡がくるんだよ」


「で、どうしたの?」


「ミコトはチヒロと二人きりで会いたがってる。

 シノもそうだね、友達になりたいみたい。

 ミサキとカエデも会いたがってるね……これはミコト目当ての女子グループへの勧誘だろうけどね」


「ミコトは私と会ってどうする気なの?」


「気になる女子が初めてできたから、ちょっとでいいから付き合ってみたいって、脳味噌お花畑なこといってる」


「残念なイケメンだね……。

 ミサキと付き合えばみんなが幸せになるんじゃないの?」


「うん。そう返しておいた」


「で?」


「ミサキは腹黒いから無理ってさ」


「うは、なんでそういうの気付けるの?

 残念なイケメンなのに」


「チヒロが見る目なさすぎなんだよ。

 グループデートはチヒロがミサキに気があったから開催したらしいね」


「そうだったのか……じゃ、消滅?」


「うん、そうなりそう。

 ミサキは継続したくて必死みたいだけどね」


「カエデは勝ち抜けか、ミカも勝ち抜け?」


「うん。

 ミカはレイとくっついたってさ。

 そして予想通りミサキの女子グループから抜けてる」


「私ミサキにいじめられるかな?」


「大丈夫だよ、ミサキはそこまで学園カーストの上位にはいない。

 女子からの支持が得られないからね。

 幼馴染のカエデのおかげで今の立場にいる感じだし」


「シノはどうなの?」


「シノはミサキのグループから離脱した。

 チヒロ目的だったしね。

 今は、チヒロとグループ作りたがってるね」


「シノは裏表なかったな。

 行動が謎だったけど、理由はわかったし」


「うん。

 学校始まったらシノと行動するのが良いのかもね。

 同じクラスだし。

 通信アプリの連絡先教えてもいい?」


「ナツキが大丈夫だって思うなら。

 なんかもう判断力も決断力ないよ……」


「あはは。

 シノなら大丈夫だと思う。

 伝えておいた」


 早速、チヒロのスマホの着信音がなる。


「チヒロ。出ないの?」


 ナツキがチヒロのスマホに出る。


「チヒロのスマホだよ。

 僕に、君付けは入らない。呼び捨てでいい。

 チヒロは、女子になってメンタルがやわになってる感じ。

 ミサキのグループの洗礼を受けて、早速、人間不信になってる。

 引きこもりたがってるよ。あはは。

 メッセージから始めてあげてくれる?

 ごめんね、ありがとね。

 仲良くしてあげてね。

 じゃ、また」


「ありがと」


「いいよ。そういうところも含めて、チヒロが好きだから」


 チヒロは自分のスマホを開くと、シノから来たメッセージにちまちまと返信を始めた。

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