第8話 ドラゴンの王(5)

 魔法陣から出て優子に近づく少年は言った。

「お前を殺しはしない……と言うより、今はお前のせいで、この体を維持するだけで精いっぱいだ」


 !?

 咄嗟に優子は少年の体を仰ぎ見た。

 その瞬間、もうすでに優子の目の前にまで来ていた少年の股間にある小さなオクラが、その鼻先にそっと触れた。

 きやぁぁぁぁぁっぁ!


 優子は鼻先を押さえてのけぞった。

 過去の世界で凌辱され続けていたはずなのに、少年のオクラをまじまじと見たのは初めてであったのだろう。


 一応、これでも女子高生。

 処女である。


 なに?

 凌辱されているから処女じゃないだろうって?

 生きかえるたびに体は再生されるんです。

 残るは痛々しい記憶のみ。

 それもおバカな優子によってに変換された都合のいい記憶。

 でなければ、とっくに精神が壊れているわい!


「なんで裸なのよ!」

「何を言っているのだ、俺は最初から裸だが」


 手で目を隠す優子は残った手でスクールバックの中をごそごそとあさりだした。

 そして、何かを取り出すと少年に突き出したのだ。


「これでも着てなさいよ」

「これなんだ?」

 突き出されたヒラヒラとしたものを少年は顔の前で広げマジマジと眺めていた。


「服よ! 服! あんた服も知らないの?」

「俺、ずっと裸だったからな……悪いか」

「その人間の恰好で、裸だったら不審者よ。少年と言えども不審者よ!」

「そうか……だったら、こんなものよりもっと格好いいものはないか。

 そうだな、勇者みたいな!」

 すでに少年の目はキラキラ。


 って、お前……先っきまで死にそうじゃなかったのか?

 しかも、目の前の小娘はお前を殺そうとしていたのだぞ……

 しかし、少年は初めて身に着ける服なるものに興味が移っていたのだ。


「ちょっとアンタ、言えばいいってものじゃないのよ。身に着けるには相応のレベルってのが必要なんだから。一体レベルはいくつよ!」

 優子はスクールバックの中をごそごそと探しながら確認した。


「大体のものなら大丈夫だと思うぞ。だって俺、レベル99だから」

「はい?」


「だから俺、レベル、カンストしてるから」

「はい?」


「あぁ、めんどくさいなぁ」

 少年は、先ほどの優子がしたのと同じように目の前の空間で手を振った。

 すると、またも青い光を発した板状のステータスが現れたのだ。



 氏名 ヤカンドレル=ゴールデン=ドラゴン

 年齢 902歳

 職業 ドラゴンの王

 レベル 99(負傷中)


 体力 999,999→120

 力 999→100

 魔力 999→100

 知力 299→30

 素早 200→30

 耐久 555→30

 器用 899→30

 運  5→3

 固有スキル 

 死亡回数 0


 右手装備 なし

 左手装備 なし

 頭装備  なし

 上半身装備 なし

 下半身装備 なし

 靴装備 なし


 攻撃力 999→100

 守備力 999→100


 所持金 102,999,892

 パーティ なし


 少年のステータスを覗き見る優子。

 目が点になっている。


「なっ! レベル99だろ」

 そいうと、得意げに少年はステータスをしまった。


 驚く優子は必死になって口をパクパクと動かした。

 そして、何とか言葉を絞り出す。


「あんた……本当にヤカンドレル=ゴールデン=ドラゴンって言うんだ……」


 少年は固まった。

 レベルに驚いたのではなく名前ですか……というか、先ほど名のったのに、あなた、全く信じていなかったのですか。


 いやいや、それ以外にも驚くところあるだろ!


 一応、俺、ドラゴンの王様だぞ……


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る