第18話トラットリア家のしきたり

 私達トラットリア家は代々王家に仕えた者の家系だった。

 女子に生まれると必ず王家に上がることが決定され、人としての生を失う。

 そんな中で生まれた最初の女性がシル.A.トラットリア、王家には執事として仕えたそうよ?

_あれ?


 輝石の勇者は?


 ある日シルが刻の皇女を連れて城を脱け出す事件が起きたの、、、


_その話長いかな?

 皆真剣に聞いてるから横槍は入れないでおこうかな。

 その話では森の奥に冒険だと走り出す皇女を止めるため、シルも走り出したらしい。

_随分お茶目な皇女ね。

 当時は魔王全盛の時代で今よりずっと厳しい環境だったそうだ。


 今の魔王はまだ優しい方なんだよ?


 先代はもっと魔王らしかったようですね。


_あ、代替わりしてるんだ。

 案の定皇女は森の罠にかかって、下級悪魔に捕まり、、、

 シルも立ち往生。

 でも、そんな時目の前に光る石が現れて悪魔に当たり、皇女は助かった。

 シルが呆気に取られている内に翠色に光る石はシルの胸を照らしこう問いかけた。


「汝、輝石を求め輝石に求められるものか」と。

_!?


 私が聞いた言葉だ。

 はい。と答えたシルは最初の輝石の勇者となり、下級悪魔を撃退し難を逃れた。


 その後生まれたシルの妹たちは早い遅いの違いこそあるものの輝石に選ばれ、それが最初の輝石の勇者となった。


「絵本では黒い雲が魔王を覆って分身作っちゃうんだよね」

 頭の後ろに手を回してうんざりしたように言う萌木色の髪のクリュー。

「純粋に憧れてたのは子供の頃だけで、大人になるにつれ薄れていったわ」

_普通そうなるよね。


 赤毛の言葉に深く頷く山吹以外のクリューたち。

「でも、クリューは違った」


 お姉さんに水先を向けられるクリュー。

「さっきも言った通り私達は本名を名乗れないの」


 察しの通りクリューにも本名がある。と赤毛は言った。

「本名は本当に愛している人だけが視える」


 自分の口で語ることはできないらしい。

「私達にはまだいないけど、ルゥになら或いは、、、」

_誰?

 ルゥとはクリューのことだと教えてくれる。


 ミドルネームのようなものね?

 私はラ、私はティと順繰りに教えてくれるけどいっぺんには覚えられそうになかった。

 あとから現れたのを指してあっちがウェイとロー。

_無理だってば。

 途中から覚えるのは諦めていた。

 レモン色の髪が

「私達はこのミドルネームで呼び合うの」


 お互いを区別するためにね。

 そして誰からともなく手を取り合うクリュー達。


 ルゥが遅れていた。


「ルゥ、私達がここに来た理由、わかってるわよね?」

 しぶしぶラの手をとるルゥ。

 どうやら輝石の勇者の使命は事前に教わっているらしい。


「輝石の勇者よ。汝、この先に臨むか」

『はい!』

 綺麗な声がピタリと揃った。

 それぞれの胸に光るネックレスの、窪んだ部分に輝石が入り込んでいく。


そして何もなくなったはずの龍の目が光る!


「承知した!その覚悟今一度試させてもらう」

 声と共に五人が龍の像に吸い込まれていった。

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