第11話

「あのね…?」少女が泣いていることに声音で気がついた。「ごめんなさい…」そう言って泣きはじめ意味がわからないと彼女の方を見るとどうやら腕を両方骨折している様だった。そしてその横には真っ赤な顔をした母親と思われる人物。突然真っ赤な顔をした女性は俺にこう言った「はじめまして。私の名前は東山 美紀と申します。あなたのお父さんが亡くなった理由をお聞きになられましたでしょうか?」俺は知らないと首を横に振ると彼女はそうですか…と話しはじめた。「私と娘の理香はデパートに出かける予定だったのです。というのも娘の誕生日でして。理香は最近流行りのゲームが欲しいと言っていましたが私にはどの機種かわからず一緒にゲームを買いに行ったその道中でした。楽しみだったのでしょう。理香は家を飛び出し住宅街の道路に出ました。今思えばこの時私が理香を叱って無理やりにでも止めていればあの事故はなかったのかも知れません。」この女、なにを言っている…?俺は大体の結末をこの時察していた。「理香が飛び出した道路からかなりの速度が出ているジープが接近していました。飲酒運転だったそうです。娘はすくんで立ち尽くしていると1人の男性が理香を勢いよく突き飛ばし、娘の代わりに車にはねられたのです。突き飛ばしたジープは勢いよく逃げ去り私と理香、そして血塗れの命の恩人の姿がそこにはありました。私はすぐに病院に電話をかけたのですが彼は薄れゆく意識の中でこう言ったのです。『あの子に辛い経験をさせてしまったことをどうか許して欲しい』と。そして救急車が到着し病院に向かったのですが…」そう言って彼女は俯いた。そっか。だからこの子はこんなに泣いて…俺は「ごめんなさい。行かないと」とだけ残しとある場所に向かった。「親父。なんだかかっこいい死に方したそうじゃないか。親父らしいよ…。俺本当はなんで家族より見知らぬ少女を助けたのかって思ってた。でもさ、死ぬ最後まで親父はその子のことを考えてた。俺は親父を強い人間だと思うし誇りに思う。」当然反応はなくピクリとも動かない。母は隣で泣いていたが俺の話を聞くとすぐに部屋を出て行った。恐らく話を聞きに行ったのだろう。あ、そうだ俺言わなきゃいけないことがあったんだった。聞いてくれるかな…信じてくれ無さそう…でも…「親父。俺、彼女出来たよ。」親父がいつもみたいに高笑いしているような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る