第9話

俺はいつものように支度をし、学校へと向かう。「東条と気まずくなってたらいやだな…」と心配しながら向かうと異様な光景が広がっていた。なんだか俺を待つような雰囲気。普段からこんな感じだと良いのになぁ。なんだか王様みたいだし。そして俺はいつも通り席に着くと彼女は「おはよう。」と頬を赤らめていた。ん?俺彼女のこと振ったよな…と不思議そうな顔をしていると彼女は「もしかして忘れたの…?私たち付き合ってるわよね…」と不安そうに確かめてきた。よくよく考えると付き合った気がした。そもそも俺が振る理由なんてないしな。きっと夢か何かだったんだろう。俺は「これからよろしく」と微笑むとクラスがざわついた。おめでとう!だの羨ましい!だの聞こえてきたがまずお前ら誰だ。急に馴れ馴れしくしないでくれ調子に乗ったらどうする。その後、授業を終えた俺たちは例の喫茶店に行くことになった。「今日は付き合って初めての記念日だから俺はコーヒーを頼むよ。」と自慢げに言うと彼女は「そう。好きになると良いわね」と清楚にふふ、と笑った。これが間違いなく初めて飲むコーヒーだ。苦い。と舌を出すと彼女は「まだまだ子供ね」とそう笑った。この時俺はこれからもきっとこのアイスコーヒーを飲み続けるのだと何故か確信していた。会計を終え外を見ると土砂降りだったがお互い傘を持っておらず店の前で立ち尽くしていた。車は全く通っておらず雨の音が響いている。なんだかとても嫌な予感がして早く家に帰ろうとあれこれ手を考えたがどれも出来ず、結局雨が止むまで彼女と立ち尽くしていた。そして聴き慣れたメロディ、着信音が鳴り始めた。この時俺は彼女が出来て浮かれていて、これから始まるのが天国ではなく地獄であることを知りもしなかった。

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