ガーデニングを楽しんでいたら空から宇宙船が落ちてきた件

河童

何で狙ったかのように花の上に落ちてくるかなぁ。

 のどかな田舎町の午前十時、僕は日課の花の水やりをしていた。

 そう、事件はいつも突然なのだ。

「ドンッ」


 僕の背後で聞いたことのない重い音がした。爆発音というやつだろうか? それにしては何かが弾けた音ではないように思う。

 僕は恐る恐る後ろを振り返ってみた。


「そこの君、非常に申し訳ないが火を消してくれないか? これではワレの船も植物も燃え尽きてしまう」


 誰かが話しかけてきたが、その言葉は耳に入らなかった。それもそのはずで、僕の背後で大切に育てていたヴェファラテスの一輪が煌々と燃えていたのだ。

 どうしようか考える間もなく、僕は手元にあった水やりバケツで水を浴びせる。炎はすぐに消えたが、花はすでにそれ以前の原形をとどめていなかった。


「……すまない。そこまで大切にしているものだとは思わなかった。謝罪する」

 うなだれた僕に誰かが話しかけている。さっきの声だ。辺りを見渡してみるが――誰もいない。気のせいか? そもそも、この直接耳にささやくような声は聞いたことがない。音を介せず直接僕に……。


「こっちだこっち、燃えてしまった花の下だ」

 何かがいる。ヴェファラテスの花壇に見たことのない生き物がいた。僕の手のひらくらいの大きさだろうか。胴体から生えている一組の前肢はぶらんと宙に浮いていて、もう一組の後肢が地について体を支えている。前肢は腕の役割を、後肢は足の役割を担っているようだ。


「あなたは……?」

「ワレは名前をフジーカ=イセーという。この宇宙の遥か遠くから調査をするためにやって来たのだが、調査対象の星に到着する前に宇宙船が壊れてしまった。そういうわけで、やむを得ずこの星に着陸したのだ」

 ずっと昔に聞いたことがある。僕たちの真上にある大空のさらに向こうには、どこまでも続く暗闇の空間――宇宙があるのだと。そこには僕たちが暮らしているような星がたくさんあって、その中には生き物が暮らしている星もあるのだと。


「君、名前は何というか?」

「名前は……アルビン」

「ワレの宇宙船は見ての通りだ。これでは調査どころか、ワレの住む星に帰ることもできない。花を燃やした挙句にこんなことを頼むのは、それこそ虫がいいというものだ。しかし、ワレの頼みを一つ聞いてくれないか? アルビン」

「いいけど……」

「ありがたい言葉、感謝する。宇宙船の修理が完了するまで、この家に住まわせてくれないだろうか?」

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