お出かけ
この生活が始まって、2週間が過ぎた頃。
「うーん、どこで買おうかな……」
おれはリビングの椅子に座りながら、複数のチラシを眺めながら、唸っていた。かれこれ、1時間はチラシとにらめっこしている。ずっとこうしていると我ながら、優柔不断なんだなと思ってしまう。
「何してんの?」
すると、リビングに入ってきた葵ちゃんがそう聞いてきた。
今日は土曜日なので、学校は休み。しかし、弓月ちゃんは部活、サヤさんは用があるとかで朝から出かけているので、今、家にいるのは、おれと美咲さんと葵ちゃんの三人だけだった。
「あ、葵ちゃん。いや、実はさ、家電を買いたくてさ」
言いながら、見ていたチラシを見せる。
「家電?なんでまた?」
葵ちゃんはおれの言葉に首を傾げた。
「いや、おれが使っている部屋、ベッドとソファしかないだろ?部屋で見れるようにテレビがほしくてさ。あとエアコンと加湿器も。できれば本棚とかもほしいんだけど、とりあえず、今は必要なやつだけほしくて」
「あー、確かに何もない部屋だよね」
葵ちゃんは、おれの部屋の光景を思い出したのか、苦笑した。
レストランでの一件以来、おれと葵ちゃんはかなり仲良くなった。普通に喋るようになったし、バイトがある日は、夜道が怖いからと迎えに行くようにもなった。怖い思いをしたから、仕方ないよなと思い、いつも迎えに行くのだが、何故か他の姉妹はそれをよく思っていないようだった。しかし、その理由はわからない。
「それで、どこで買うか迷ってるってわけなんだ?」
「そうなんだよ。安い店にするか、それとも多少高くてもポイント還元率の良いところにするか……」
「んー、じゃあ近くにショッピングモールがあって、その中にも家電量販店あるから、行ってみる?チラシに載ってないやつもあるはずだし」
「お、本当?じゃあ行こうか。あ、でもバイトあるんじゃ?」
「んーん、今日は休みだから、大丈夫。それじゃ準備してくるね」
そう言って、葵ちゃんはリビングから出て行き、勢いよく階段を上っていった。
それと入れ替わるように美咲さんがリビングへと入ってきた。
「あ、海斗さん。なんか葵がやけにご機嫌なんですが、何か知ってますか?」
「ご機嫌……?それと関係あるかはわからないけど、これから二人で出かけることになって……」
「え、二人で……ですか?」
おれの言葉を聞いた瞬間、美咲さんの表情がかなりこわばったように見えた。
「う、うん、テレビとか買いたいって相談したら、近くのショッピングモールに家電屋さんがあるから行こうって誘われて……」
「そう……ですか……気をつけて行ってきて下さいね……」
それだけ言って、美咲さんはリビングから出ていった。
な、何なんだ、一体……
姉妹の誰かと出かけることがそんなまずいのか……?
そんな大げさのものではなく、買い物に行くってだけじゃないか。
おれは、美咲さんの反応に対して、リビングで一人、首をかしげるのだった。
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