第三話 幕間 薪炎Interlude

《ねえ、起きてる?》

 知らない誰かが、この真っ暗闇の空間の中で語りかけてくる。

 

 あなたは?


《わたしは⋯⋯》

 声が途切れた。


 ここはどこ?


《ここは、あなたの心の奥底》

 

 心の奥底?


《うん。あなたは辛い事があって、眠ってしまった》


 ⋯⋯そっか。


《おぼえてる⋯⋯よね》


 うん。皧狐に後ろを取られて、そのままやられちゃった。


《そう。そのまま気絶してしまったあなたは運ばれて、未だ目覚めないまま。でも大丈夫、もう時期あなたは目を覚ます》


 まあ、生きててよかったというか、なんというか。


 ところで、あなたはどうして私の中に?


《⋯⋯おぼえてないの?》


 え?


《⋯⋯気をつけて。狐は、明確な目的を持ってあなた達を消そうとしている。そして、力を付けて、抗うだけでは駄目なの》


 そんな事言われても、それ以外に出来ることが無いよ。皧狐の事、知りたくても知れないんだ。


《そんな事はないよ。まだ諦めるには勿体ない、あなたはいつも、そう思いながら生きてきたじゃない》


 無理だよ、今回ばかりは詰んでる。

 きっかけを掴む方法すら分からないもん。


《⋯⋯うん、もう時間だ、もう時期光が灯って、あなたの意識も現実に戻る》


 このまま目覚めても、どうすれば⋯⋯。


《仲良くするのも良い、強くなるのも良い。でも、今のままじゃ皧狐という奇怪は祓えない。いずれあなたは霊魂になってしまう》


 えっなに? ⋯⋯霊魂?


《まずは起源を辿ってみよう》


 ねえ、貴方は一体誰なの? 皧狐の事、知ってるの?


 感覚が冴え渡ってくるのを感じる。

 駄目だ、このまま意識が浮上していく。


 せめて一言でも聞けたらと後悔を募らせたまま、私はゆっくりと目を覚ますことになった。



 語りかけてきた人物の言葉の意味は分からない。でも、今は何故か、この声を聞いていると、凄く安心出来ていた。


 声に導かれるように、私はそっと目を開ける。

 いつまでも眠っている訳には行かない、戻らなければ。


《わたしは全てを許すしか出来ない。だから、立ち向かって欲しい。どんな結末になっても、前を向いて⋯⋯》

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