第12話 サイド領にて ④

次の目的地で最後です。



目的地の名前はマウンテンサイド。

山の側にある集落だそうです。



山の側ね……

私にはどう見ても山の中…というか外輪山に囲まれたその昔、火山の火口だった場所にしか見えないんですけど!



やっぱり初代サイド伯爵って……



しかも此処に辿り着くまでがたいへんでした。

街道から外れ険しい山道を2日間、馬車で越えなければなりませんでした。



此処って何かの隠れ里か何かですか?



えっ?当たり!?

此処は領地境で、以前は大規模な盗賊団のアジトがあり、辺り一帯(サイド領とライブラ侯爵領)を荒らし回ってたいへん困っていたそうです



そこでサイド家の寄親でもある隣領のライブラ侯爵家と共同で盗賊団を討伐し、現在は町中で出来ない魔道具や魔法の実験場として使っているのだそうです。



しかし毎年この時期になるとその盗賊団の霊が現れ、実験の邪魔をするので除霊して欲しいという事です。



除霊かぁ…あんまり得意じゃないんだけどなぁ……



そうなると降ろすのはミーチ様か。

ちゃんと仕事してくれると思うけど、問題はその後ですね。



ミーチ様はハーシーが大好きだから、いなかったら直ぐに帰ってくれますが、見つけたら最後、なかなか帰ってくれないんです。



今日は休んで明日、除霊する事にしましょう。



研究所の人達が、歓迎会をしてくれるというので、参加しました。

研究員の中には稀人や自称転生者の方もいらっしゃいました。



その中で酔いの勢いもあったのでしょう。

こんな質問をして来た、研究員が居ました。



「あ…あの…わたし、ハルカって言います。セイマ様にご質問が!」



顔をほんのり赤く染めて、ちょっと興奮気味だ。

これが女性なら色っぽくて良いのですが、残念ながら30代くらいの男性でした。

確か…こちらに来る前は向こうで《こんぴゅーたーぷろぐらまー》なる職業に就いていたと聴きました。



だからと言って、邪険にする訳じゃありませんよ。



「ご質問ですか?私に答えられる事なら、お答えしますよ。」


「セイマ様は【勇者】といわれてますけど、こちらには【勇者】という職業は無いと聞いています。

どういう事なのでしょうか?」



稀人や自称転生者の方の、よくある質問ですね。



「はい、職業ではありませんよ。

この世界でいう【勇者】というのは国や神殿、人々から認められ、更に神々から認められて初めて付く【称号】です。

ですから、ステータスにするとこんな感じになりますね。」



そう言って、公開されている私のステータスを見せました。



『名前 セイマ・フォン・ユイナーダ

 年齢 26歳

 職業 神官

 称号【聖人】【勇者】      』



「とこんな感じで、ちゃんと神々から認められていないと、ステータスに【勇者】と入らないんです。

もちろん、自称【勇者】という方は沢山いらっしゃいますけどね。


因みにステータスは先程のところまでなら、開示可能です。

もちろんステータスの改竄はできませんよ。


【非公開】にはできますけど。

ですから勝手に【勇者】という【称号】をステータスに入れる事はできません。」



私の説明でハルカ研究員はそちらの方は納得してもらえました。



「でも我々稀人に、あまりその話しは伝わっていませんよ。」


「えっ!?そうなんですか?

王都の《稀人支援制度》のマニュアルにはきちんと書いてあるハズなんですけどねぇ~。」



明日の朝、王太子(兄上)を通して確認してもらいましょう。

今日はもう遅いですし……



その後ハルカ研究員は他愛ない話しをして、仲間の所に帰って行きました。



そう…ステータスは改竄は出来ませんが非公開には出来るんです。



実は私、他にも【職業】と【称号】があるんです。



『名前 セイマ・フォン・ユイナーダ

 年齢 26歳

 職業 神官 賢者

 称号【聖人】【勇者】

【神々の依代】       』



もちろん、非公開ですよ。



そういえば…此処の地名は初代伯爵が付けたのではありませんでした。

付けたのは現伯爵だとか……

やっぱりネーミングセンスは無いようです。



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