第15話
「海君、この作戦で行きましょう!」
「ああ、そうだな」
結局昨日だけではまとまらなかったので、登校中も考えて、やっと作戦が思い付いた。
俺達は陽一に伝えるためにも、急いで学校に向かうことにした。
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「お、お二人さんおはよー」
「おはようございます、澤井さん」
「おはよー」
軽く挨拶を交わし早速本題にはいる。
「陽一、考えがまとまったぞ」
「な、何をすれば良いんだ?!」
「いや、今までと変わらず俺達と一緒に昼飯を食べるだけで良い」
「え?それだけで良いのか?」
「はい、それだけで十分です」
いまいち内容が分かっていない様子だが、その時になれば直ぐに分かるだろう。
「あ、あと緊張しないようにな」
「?わかった」
さて上手くいくと良いが。
俺達は再度昼休みに集まることを約束し、自分の席に戻っていった。
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「失礼しまーす」
「あっ、こっちこっち」
「?今までと変わらず葉山さんだ、け、って?!おい海!どういう事だ?!」
陽一があたふたしているのも無理はない。なぜならいつものように葉山が来るのではなく、後ろに春風さんもついてきていたからだ。
春風さんには作戦は伝えていたが、緊張しているのか少し顔が固い。
「か、海?作戦って?」
「題して、『一緒に昼飯を食べて、仲良くなろう作戦』だ。ネーミングについて触れたらぶっ飛ばす」
「そ、そんなのきいてないんだが?!」
「そりゃそうだろ、言ってないんだから」
「な、何を話せば良い?!俺はどうしたら良いんだ?!」
大変取り乱しているが、一回落ち着かせる。
「落ち着け陽一。お前と春風さんは今まで疎遠になっていただろ?」
「あ、ああ」
「だったら最初にその壁を壊さなければいけない。最初みたいに仲良く話せるぐらいには戻らないといけないんだ」
「そ、それは確かにそうだが」
「春風さんを誰かに取られても良いのか?」
「そ、それだけは嫌だ!」
「だろ?じゃあ頑張れ」
焚き付けはこれくらいで良いだろう。この様子だと陽一も上手くやれそうだ。
葉山と春風さんを向かい入れ、一緒に昼飯を食べることにした。
陽一!頑張れ!お前ならやれる!
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そう思ってた時期が俺にもありました。陽一は春風さんが席についた瞬間に、オーバーヒートしなにもしゃべらなくなってしまった。
俺や葉山が話しをふってみても思うように会話が続かず、状況は悪化している。
何とか話題を探していると、いきなり春風さんが、
「わ、私戻るね!」
と、走って教室に戻っていった。この沈黙に耐えられなかったのだろう。わかる、俺でも多分耐えられない。
俺達の最初の作戦はあっけなく失敗してしまった。
「ごめんな、二人とも。せっかく考えてきてくれたのに」
「あ、謝らないでください。こうなるかもしれないという考えも頭の片隅にありましたから」
「……時間っていうのは残酷だな。やり直したいと思うのに、もう戻れないんだから」
「え?」
「お前と春風さんは、知らず知らずのうちに壁を作ってるんだと思う。その壁さえ取り除くことが出来れば後は簡単なんだろうけど、長い時間たっていることもあって、なかなか取り除けない」
「……そうだな。俺がもう少し早くこの気持ちに気づいていれば」
「ご自分を責めないでください、澤井さん。今日は失敗してしまいましたが、次こそは!」
「……ごめん、二人とも俺、ちょっと中庭に行ってくる」
相当堪えたのか、陽一は中庭に行ってしまった。
「海君、追いかけなくても良いのでしょうか?」
「大丈夫だろ。今は一人で考えたいんだろうし。葉山も春風さんのフォローに行ってやんな?」
「は、はい。じゃあ私も戻りますね」
席を立ち、教室に戻っていく葉山。
どうしたものか。なにか良い作戦はないか。
俺は授業も忘れ、ひたすら二人の事を考えるのだった。
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