合理的な理不尽

 昔、大学の授業で『前世というのは、理不尽な仕打ちに耐えるための仏教流の合理主義だ』という主旨の台詞を講師から聞いたことがある。
 しかし、哀しいかな人間は現世に意識を持つ限り理不尽から逃れられない。いや、理不尽から逃れようとすればするほど余計に絡め取られる。釈迦の説話に、『木の檻に入れられた牛が暴れてそれを壊したら、鉄の檻に入れられた』というものがあり、それを地でいく世界ともいえる。
 話は少し変わり、ライムライトと聞いてチャップリンの映画を思いだした。素のライムライトについてもそれで知った。チャップリンの映画は落ちぶれた中年の芸人が主人公だが、挫折や苦悩に振り回される姿が描かれている。そして主要な登場人物は三人だ。
 翻って、本作は三人の登場人物における三者三様で筋が進み、それが合流したところで『大爆発』が起こる。それは釈迦の説話にある牛の姿だろうか、チャップリンの映画にでてくる人々の姿だろうか。
 それにしても、前世を題材にしたカルト教団とは実にしぶい選択だ。単なるステレオタイプな狂信者でないのが本作の陰鬱な背景を大きく盛り上げている。
 敢えて断言しよう。
 本作は、少なくとも何らかの形で受賞する可能性が高い。どんでん返し部門は他にも良作能作が多々あるものの、本作は鬼作そのものだ。
 必読本作。

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