6話:Conference (会議)

 僕達はあれから政府の人達と共に国会議事堂に連れていかれていた。

政府専用の車にも乗ったが、今となってははっきりと覚えていない。


 僕は今、国会議事堂の会議場の椅子に座っていた。

 あまりにも重苦しい雰囲気に息が詰まりそうになる。少し無言の時間が流れた後に防衛大臣が口を開いた。

今の日本の防衛大臣は女性でバイリンガルという情報を小耳に挟んだことがあるが名前は覚えていない。


「貴方達はテレビであっていた地形が変化したりする謎の現象については知っていますか? 」


 勿論もちろん知っていると僕は頷くと唾をのんで周りを見渡す。

テレビで見るような会議場にはあの時出会った6人の男女達が暗い顔をしながら座っていた。


「はい、ご存知です。」


 鉄秤が椅子から立ち上がって手で長い髪をなびかせながら答える。彼の黒い瞳にはひとつもくもりがなかった。


「なるほど。貴方達を呼び出したのはひとつの理由があるのです。秘田さん、入ってきなさい。」


「失礼します。」


 総理大臣がそう言うと女性の声が帰ってきた。そして様々な本を手に持った女性が部屋の中に入ってくる。


「彼女の名前は秘田書佳ひだ ふみかさん。天文学のスペシャリストよ。秘田さん、今のマノ世界の情報をお話してください。」


 総理大臣はそういった後に入ってきた女性に情報を言うように指示をした。

すると彼女はプロジェクターで説明をし始める。


 「はい、今のマノ世界の現状ですが、マノ世界に向かって別の惑星が接近していることが確認されました。

はっきりとは分かりませんが調べたところ、私達と同じような惑星であると推測しています。」


 書佳はゆっくりと話を続ける。


「時間を置いていくと何故かその惑星は衝突せずに、まるで融合するかのようになっていることが確認されています。

 融合し始めた時間は今日午前8時頃。おおよそ世界に歪みが生じたりする現象が起きたのと同じ時刻です。 」  


 誰もが彼女の言葉を聞き逃すまいとその声に聞きいっていた。


「おそらくこの惑星と世界が融合した事によって、この現象は起きていると推測しています。

このまま完全に融合してしまっては世界の歪みがさらに激しくなり、最悪世界が破壊されかねません。」


 彼女の情報を聞いて僕は震えた。これが天使達の言っていたイレギュラーなのだろうか。それと同時にイレギュラーを止めなければ僕達の世界はなくなってしまう現実が一気に襲いかかってくる。

 僕はようやく事の重大さと何故僕達がここに呼ばれたのかが分かってきた。


「なるほど、これがイレギュラーか。

しかしあたし達とこの現象の結びつきが分かりません。教えてください。」


 詩音が書佳の発言に対して防衛大臣に質問をするが、彼女の言葉により防衛大臣は思わぬ質問を返してきた。


「イレギュラー?貴方達はこの現象が起こることをあらかじめ知っていたのですか? 」


 僕はギクリとした。

答えるのは嫌だが、イレギュラーについての情報は僕にしか手に入っていない。ここは僕が答えなければならないだろうと立ち上がった。


「はい、しかし現実味がないし何よりも本当に起こると僕達は分かっていませんでした。」


 僕は胸に手を当てて熱心に防衛大臣に思いをぶつける。誰だって現実味の無いことなんて信じるわけがないだろうと思った。

しかしもう現実味のない異常な事態が起こっているのだ。そのことについて否定している時点で間違っていると心に言い聞かせる。


「ふむ、もうひとつの質問を答えるとパソコンを付けると分かります。今の世界の全てのパソコンは全てハッキングにあっていて、貴方達が“アーク”という世界の救世主になり得る存在だという情報しか画面に出されなくなっています。」


 僕はそれを聞いて愕然がくぜんとした。おそらくハッキングをしたのはあの夢に出てきた天使達だろう。

ドッキリとしか思えなかったが、イレギュラーによる空間の歪みなどでこの件も本当にしか感じられなくなっていた。


「あとひとつ理由はありますが……。それは皆さんに後で伝えましょう。伝えれる時間があればいいのですがね。」


 防衛大臣はそう言いながら怪しげな笑みを浮かべる。どうやらまだ切り札を残しているという事実に僕はおなかいっぱいになっていた。


「そうですか。これからあたし達はどうすればいいんですか? 」


詩音の黒い瞳には困惑の表情が浮かんでおり、わらにもすがるように防衛大臣に訴える。


「私に着いてきなさい。」


 僕達はただその言葉のまま防衛大臣についていくことしか出来なかった。

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