アフターストーリー
第0話 夢から覚めて(プロローグ)
やけに長く感じた夜はようやく明けて、秋が近いというのに今日もうざったい朝陽が部屋に射す。
俺はそのまぶしさについ目を開くと頭元をガサガサと探り、その半円状をした目覚まし時計をつかむ。そして
彼女もいなければ、友達もほとんどいないぼっちには朝早く起きてすることなんて存在しない。
ぼっち大学生こと
どうせ大学に行ってしまえば今日も今日で相変わらずにレポートに苦しめられるだろうし、もしなかったとしたら部屋で一人でゲームでもしているのだろう。そうやって、これまでの生活は一人ぼっちで循環している。そしてこれからもそうやって循環していくはずなのに、昨日はおかしな夢をみた。
昨日どころではなく、ここ最近ずっとおかしな夢を見ているような気がする。
『コンビニで出会った天使のような美人は、実は六年前出会った少女だったし、しかも告白してきた』
字面にするだけでもあまりも甘々な出来事たちは、現実味が感じられず、思い返せばどれもまるで夢の中にいるような出来事だった。
俺は妄想癖を疑い、自分の頬を思いっきりつねってみるも、ちゃんとヒリヒリと痛かった。どうやら、いまは現実らしい。
でもここ最近の出来事が、どこまでが夢でどこまでが現実かよく分からなくなってるから、たぶん思い描いた全ては甘々な夢だったのだろう。とても現実だとは思えない。
俺はその甘々な夢に見切りをつけ、厳しいぼっち生活に向かうべく、目をこする。そして、起き上がるためベッドから足を下ろしたとき、玄関の方から「ピンポーン」と音がする。
ピンポーン?
俺は玄関で軽く弾むように響くその音に違和感を感じた。
俺の家に用があるのは、通販か保険のセールスか親の仕送りくらいのものである。しかも、こんな朝早くに限ってはたぶんそのどれもが当てはまらないから、俺は首を傾げる。
だけど、寝起きの頭ではそんな違和感を気にすることはなく、俺は寝ぼけた目をこすりながらドアまで歩いていくと、さも当然のようにドアの鍵をカチャッと開ける。
そして、ドアノブに手をかけて押し開けようとした時、そこでふと手が止まった。
ドアノブに手をかけたとき、すごく嫌な感じがしたのだ。てのひらに伝わる金属製のドアノブの冷たさが不快だったのか、金属に触れる違和感が嫌だったのか、俺自身にもわからないその嫌な感じは、俺の手を止める。
どうせセールスなんだしわざわざ相手をしてやる必要もないかと、ドアノブから手を離すともう一度ガチャリと鍵を閉めた。
すると、ドア越しに「えっ? ちょっ?」と透き通るような焦り声が聞こえたあと、ドアノブを捻ってガチャガチャとドアを開けようとする。
俺はそれを無視してベットに再び戻ろうとすると、今度はチャイムが鳴った。それも連打。
先に鳴ったのんびりなチャイムさんが鳴り終わるのを待たずに、せっかちな次のチャイムくんは割り込むように鳴った。まるでチャイム音が追いかけっこしているみたいだ。
なんて言葉で表してみるけど、それは言葉で表すほどほのぼのとしたものではなく、現実には純粋にうるさい。
チャイムの嵐に耐えきれなくなった俺は仕方なく、嫌な予感を振り切りそのドアを開ける。
ドアノブを押した向こう側はとても明るくて、朝陽に包まれて爽やかに輝く天使がいた。
肩まである青い髪は朝陽によってキラキラと反射し、夏服の袖から伸びる腕は朝日に照らされ白く輝いている。
そしてなんといっても……
「おはようございます! 今日も来ちゃいましたお兄さん!」
彼女は太陽のように明るい笑顔をしながらそう言った。
その笑顔の眩しさは俺の目を一気に覚まさせ、これまで目を逸らしていた
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