第9話 これも魔法じゃねー?

 

「いよーーう」


「おはようございます美優」

「あぁ、おはよう。」



 あっれー。

 今日はルビーに先越されたみたい。

 クロウとルビーはなんだか深刻な話でもしていたような顔付き。



「つーーか…!!」


「? どうされました?」

「朝から騒がしいな」



 ルビーの顔を見てゾッとした。

 朝イチでしょ!?ありえないんですけど…!



「ルビーどした…!?顔色めっちゃ悪くね…!!?」



 クマはできてるし、血色も悪いし、髪も艶がねぇ…!

 生理前なの!?



「あ…え、えぇ…まぁその…」とゴニョゴニョ口を濁す。



「別にこいつなら言っても大丈夫だろう?」

「どしたー? 何かあった…?」

「えぇ…実は・・・」



 そう話始めたのはミカちゃんの事だった。


 昨日仲良し3人組で歩いてたら、ミカちゃんがまた婚約者がいる別の男性と仲が良さそうに話していた。

 それでその男性が丁度去っていったので、当然のごとく注意をしたらしい。

 その場はそれで終わったが、ルビー1人だけになったときまた出くわした。

 しかも何と自分の婚約者、つまりジェード第二王子とまるで恋人かのように腕を組んで歩いていたと…。

 なのでまたミカちゃんに直接、

「先程も申しましたでしょう?何回ご説明すれば宜しいのですか?婚約者が居る男性には、」と言いかけたところで

「おい、ルビー!」とジェードがルビーの肩を押さえた。

「何故そのような言い方をする! 美香は生まれた世界が違うのだ!」

「しかし…!」

「ルビー! お前こそ何度言わせれば気が済むのだ!」

「ッ・・・!」



「それで…もう何も言い返せなくなってしまい、そこから立ち去りましたわ…。」

「私の弟がみっともないことをした。本当にすまない…。」

「いいえ、殿下が謝ることでは御座いませんので…!」

「ひっどくね? ミカちゃんもジェードも、頭悪くね?マジで、どっちもどっちつーか…。ごめんね、ジェードの事までディスって…。」

「でぃす…? あ、いえ、まぁ、言われて当然と言いますか…」



 はぁ、と深い溜め息をするルビー。

 生理前とか言ってごめん…!そりゃ血色も悪いはずだわ!



「私、もうどうしてよいか分からなくなりました。 ジェード様があんな風なので…周りからは噂話を囁かれ、毎日のように美香様を連れて歩いているので自分が惨めで、私が注意したことは間違っていたのでしょうか? 世界が違えば許されるのですか? 婚約者である私の立場は…? ジェード様は、私より、美香様の方が良いのでしょうか…?」



 震えながら涙をこらえるルビー…。

 立場的な問題もあるだろうし、乙女としての心情もありで、

 クロウと私は顔を見合わせ、「う"~~ん」と唸ってしまう。



「正直さ、うーん、あたし的な意見ね? ルビーがどうしたいかとかは分かんないし、家の事情とかもあるだろうから1つのアドバイス的な感じで言うけど、」

「はい…どうぞ遠慮なく仰って下さい…」


「正直さ、正直~、要らなくね!?って感じ。」


「は、はい…? それは…何が…」


「え?ジェードが。」


「じぇ…?」

「いら、ない…」


「いや、ぶっちゃけあたしなら、あんな男要らねぇ。他に自分を大事にしてくれる人、絶対居るし。別の女にのぼせてるヤツ何なの?って感じだし、じゃああたしもお前要らねぇって思うんだよね。あたしならね!? だって、実際そうだったし! お前じゃなきゃいけない理由なんてねぇ!自分を傷付ける人と一緒に居てもただ傷付くだけ!!なら別れる!」


「ふふっ・・・!」

「ふっ、」


「へ? 何か笑うとこあった…?」


「いいえ…!」

「新しいというか…美優らしいのか、この貴族の社会では なかなかない意見で面白いよ」


「そうですわね…、ジェード様じゃいけない理由…。 何でしょうか? 私は、ジェード様が好きなのでしょうか…? それすらも分からなくなってきてしまいましたわ」

「ゆっくり考えれば良いーんだよ。傷付くかもしんないけど悟りは開くし!」


「ありがとう、美優。元気が出たし、何だかスッキリしたわ!」



「もう大丈夫よ!」と、ルビーは笑って見せる。

 いやいや!大丈夫じゃねーよ!?



「ルビー…!」

「は、はい…?」



 ガシッと腕を掴む



「メイク、しよっ…!?」


「め…?一応しておりますが…」

「はっ!?それで!?嘘っしょ!!?」

「え、ちょっとショック…」

「いーからいーから!ココ座って!?いきなり喚ばれたからちょっとしか持ってなかったけど、ルビーには十分っしょ!」

「じ、じゃあお願い致します」



「よしっ! 全体的に血色悪いし、赤系でいこっ!ルビーだしぴったりっしょ!」

「そんな派手なの似合うでしょうか…?」


「任せとけ~! クマがあるからコンシーラーで隠して~、艶感のあるファンデと、アイホールは全体的にベージュで、ラメ入り赤系シャドウで囲みま~す、ルージュも赤で大人っぽく、う~ん、髪もちょっとパサついてっから全部まとめて団子にしよっか。」



 そして30分後───・・・



「ほら、完成。鏡見て」



 手持ちの鏡を渡すと、パアッと明るくなる表情。

 どーだどーだぁ~! 私の腕前なかなかいけてるっしょ!



「これが…本当に私・・・?」

「お前凄いな…魔法を使ってないのに…、魔法みたいだ…」

「いやぁ~もう素材が良すぎて…!」




 それからマリンとペリドットは勿論、他の女子生徒もきゃあきゃあ騒いで(そりゃ男子もざわついてんよ!)

 私のメイク講座を受けたいと言う子が人伝で何人か来たらしい。

 まぁ可愛くするのは楽しいけど皆来られちゃ無理だわ!

 マリンとペリドット優先で!


 あとメイク後のルビーを見てジェードは少しびっくりしてたらしい。

 ざまぁみろって感じだよね~。

 あとでこんな綺麗で可愛い人を蔑ろにしたこと後悔すればいい!

 ばーか!



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