第5話 ぱりぴりぴーぽー

 


ゴーン、ゴーン・・・


昼の鐘が鳴った。

わらわらと何処かへ行くクラスメイト。



「天音様? 皆さんは食堂へ行かれますのよ?あなた何処にあるかご存知?」

「いや? 知らなーい、何も聞かされてないだよねー」

「では、私達と一緒に行きませんこと?」

「まじでー!? 行くー!」



テキトーにそこら辺に居るやつに聞こうと思ってたけど・・・。

まさか私に気ぃ使ってくれるとか…!

神じゃん!


ちょっと感動してたら、後ろから顔を覗かす友達二人。



「ル、ルビー様っ…! この方も一緒にランチを…?」

「だって初めてなんですもの。 分からないでしょう? 誰かが教えてあげなければ」

「さすがルビー様…!」

「そうですわよね!」


「では、行きましょうか」

「おーう」



そして、姿勢の美しい三人の後ろを付いていく。

つーか、学校とか言って、めっちゃ金持ちそーな建物じゃん。

天皇かよ。



「私達、自己紹介がまだでしたわね。 私はマリアノ公爵家長女のルビーですわ。 こちらのお二方は私のご友人ですの」


ルビーは、長い美しい黒髪をハーフアップにして、すごく深い緑の瞳。肌も白く、顔立ちも整って綺麗だが少々キツめな感じ。

そして、またさらっと友達が滞りなく自己紹介出来るように誘導するルビー。



「私はブルーノ侯爵家次女、マリンですわ」

「私はシャトルーズ侯爵家長女、ペリドットですわ」



マリンは名前の通り青い瞳が綺麗な、私とは違う本物のプラチナブロンドのショートカット。

顔の造りはこれまた整ってて、でも笑顔が可愛い人だ。

ペリドットはゴールドの瞳にミディアムボブのめちゃいい感じのミルクティーカラー。

他二人とは違うおっとり系美人。



「よろしくー。 つーか皆、見た目通りのきれーな名前じゃね? いーなー、みんな宝石じゃんね。」


「あら、ストレートに褒めてくださるのね。 ありがとう、嬉しいわ!」

「え、あ、ありがとう…」

「まぁ、ありがとう…!」



思った事そのまま言っただけなんだけど、三人共、頬をほんのり赤く染めてる。


なんだなんだー、フツーにかわいーじゃーん。

思ったより、やってけそーで安心したし!



「さぁ、こちらが食堂です。 あちらで自由にお好きなものを取って、お好きな席について、頂くのです」

「私のおすすめはこちらのパンですわ! この場で焼いてますのでとっても美味しいんですのよ!」

「んー、私はこちらのオムレツかしら? 卵がふわふわで好きですの!」

「へー! えー、どーしよっかな~~、めっちゃ悩む~~!」

「どれも美味しいですわよ? ここの専属のシェフが、毎日丁寧に作っていただいてますから」

「シェフとか!やば!」



「めっちゃいい匂いするし、今日はパンにしよっかなー」と手を伸ばしたところで「あ、」と気付く。



「ミカちゃんじゃん?」


「あ、美優さん」


 

ミカちゃんは1つ年下なので、1年生の学年。

私は2年生なので、授業は一緒には受けないのだ。



「つーかもう男と一緒?」



ミカちゃんの隣に居るのは、少し長めの金髪キラキライケメン。

しかも腕組んでるし。



「まぁ…!ジェード様…!?」

「そ、そちらのご令嬢は…」

「・・・」



どうやらこのキラキライケメンは、ジェードと言うらしい。

マリンとペリドットは、何故かおどおどしながらミカちゃんの事を聞く。

一方ルビーはじっと黙ったまんま…。



「やぁ、君達。 美香は異世界からの転移者で、分からないことばかりだと言うので私が案内しているんだ。」


「ま、まぁ、そうだったのですか…」

「私達もこちらの天音様を案内しているとこですの…!」

「君もかい?」



キラキライケメンは、甘ったるい顔で私に微笑む。


うーわ、なんだこの眩しさ。

王子かよ。



「あ? あぁ、まぁ…」


 

何だか気に入らねー男だなー。と思いテキトーに返事をした。

すると黙ったままのルビーが口を開く。



「ジェード様、さすがこの国の王子であらせられるだけあり、お優しいですわ!」



「ありがとうルビー」と、ニコリと完璧な顔で微笑む。


いや、つか、マジの王子!

そりゃキラキラも増し増しだよね。



「えーーー! ジェードって王子さまなの!? 知らなかった! 王子さま!! 本当に居るんだ!! 王子様っ! すごーーーい!!」



「何て不敬な…」

「呼び捨て…腕まで組んで…」



ご友人二人はヒソヒソ話で、ミカちゃんを見つめる。


は?

つか、この女は何なの?

ガールズバーかメイド喫茶か何かで、体得した術なの?

素??素なの???

ヤバくない??

この女マジ恐くない!??


そこで黙ったままのルビーが口を開いた。



「美香様…と仰いました? この方は私の婚約者ですの。 婚約者が居る男性とそんなに親しくしてはいけませんよ」

「えっ…、あ…はい」



ピリリ──



わーー。


婚約者とか!

まだ遊び盛りっしょ!?

さすが異世界!

つーかバチバチじゃん!



「ルビー、美香はまだ何も知らないんだ。 仕方ないだろう」

「えぇ、そうですわね、ですから教えて差し上げてるのです。 美香様の為でもあるでしょう?」

「為って…」

「い、いいの! ジェード、ごめんね? 私が悪いの。 私が何も知らずに…、優しくしてくれたから甘えちゃったの…! ルビー…さん?も、ごめんなさいっ!」

「美香が謝る必要ないよ」

「ぐすっ…でも…」



はぁ?


んっだコイツ・・・

つーかこの男!

ミカちゃんもまじで。

うぜーの極みじゃん!


ジェードとか言う男!

テメー、自分の女が目の前に居るクセに何で他の女と腕組んでんだよ!断れよ!

何なの!?

ミカちゃんクソビッチなの??

つーか何でお前泣く???


謎!!



「あーもー、お腹空いたからさー、さっさと行こー」

「…えぇ、そう致しましょうか」

「そ、そうね…!」

「ええ…!」



私達はアイツらが視界に入らないような隅の隅でランチをした。


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