3、恥部らしいんですけど

 

 オーランド王国、高等学校


 登校初日───。



「いやだあれ見て」

「まぁ破廉恥」

「何て恥ずかしいの?」


「女性の品と言うものが……」

「タダで拝めるんだ。ラッキーだろ」

「お前は全く」



 またもやザワついている金持ちそうな男女。

(私はフツーに歩いてきただけなんですけど?文句あんなら直接言ってこいしー、いちいちうぜーな)


 なんだこの丈の長さはと、短くしたスカートがそれほど悪かっただろうか。

 なんて少し気にしてみる美優だが、流石にこの長さは無い。

 昭和かよと言いたくなる。


 ロイヤルブルーと、白のチェックスカート。

 それにダークブルーのジャケットは、金の刺繍に、同じく白のライン。

(てゆーか、このジャケットもなんだし。キツイし。もっと余裕持たせて作れし!ぴっちぴちなんですけど!)


 仕方無くフロントのボタンを外せば、これまた質の良い白いシャツ。

 そしてシャツのカラーにも刺繍、私立の高校より高そうな制服だ。

 質の良い白いシャツもぴちぴちして苦しい。



「ちょっと貴女! 宜しいかしら?」

「あ?」



 美優初めて声を掛けてきたのは、長い髪を颯爽と靡かせ胸を堂々とはって姿勢よく歩く、高飛車そうな女だった。

 後ろには二人程友達がついてきている。

 三人共、この固っ苦しい制服をきちんと着こなしている。


 その高飛車そうな女は、美優の前まで来ると腕をくみ、顎を少し上げ、まじまじと顔を見つめた。



「あら? あなたが、もしかして異世界からの転移者かしら?」

「え? まぁそうだけど……」



 これが噂のマウンティングかと思い、構える美優。

 だが少々違うらしい。



「それなら知らないのも仕方ありませんわね」

「はぁ……?」



 目の前の女は、「あなたのソレ!」と、上品な指先で美優の太ももを指した。

 もちろん美優は「なんか文句でも?」と返す。



「文句大有りですわ!! 貴女の世界では普通かもしれませんが、私達の世界では太ももは晒してはいけませんのよ!」

「はァ!?んな事ある!? だって太ももっしょ!? あたしのファッション全否定じゃね!?」

「しかし太ももは恥部ですのよ! 乙女が恥部を晒して歩くなんて!」



 その女は顔を真っ赤にしながら一生懸命に言うので、流石の美優も本気なんだと分かり、ビビってしまう。

(え。まじで言ってんの。恥部とか、まじなの……??)



「ち、恥部!? 太もも恥部なの!?マジで!?」

真剣マジ、ですわ……!!」

「あたし、恥部見せながら歩いてたってこと!!?」

「そうです!!」

「めっちゃ恥ずいじゃん!」

「そうです!!!」



 もっと顔を真っ赤にしているところを見ると、注意するのも中々恥ずかしかっただろう。

 マウンティングだと思ったことを心の中で謝るのと同時に、(なんだこいつめっちゃ良い奴だな)と掌返しをする美優。

 美優も美優で単純で素直なギャルだ。



「ありがとな!教えてくれて」

「いいえ、当然ですわ!」

「誰も教えてくれなかったから助かった!まじで!」

「えぇえぇ、分かりましたから早く隠してくださいな……」

「おっす!ちょっと行ってくる!」



 「ど、何処にですの……!?ちょっと、貴女ー……!?」と後ろで引き止める彼女に気付かず、ただ後ろ指をさすだけの野次馬共に『くっそやろーどもー!』と思いながら、登校しかけた学校を引き返す美優だった。

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