4-7

「今夜は満月になりそうだね」



今日は秋元のおじさんと一緒にカフェでスイーツを堪能しようと言われて施設を出て都会という所に来た。


突然言われたこと…今夜が満月だと言うならなんだと言うんだ?



「おじさん…今夜が満月なのはわかるよ


ニコに月を使った日数計算を教えてもらったもん」



そういえば「月が綺麗ですね」という言葉が存在するな


意味は忘れたけど、おじさんはそのことについて言いたかったのだろうか?


大体今の時間は真昼間


空が暗くないから星も月も輝かない


深い深い藍色の空に散りばめた宝石はまさに自然が作り出した芸術である


なんて今はそんな事を語る必要はないんだ


おじさんはちゃんと言葉を選んで意味を含めたことを言ってくるんだ。


となると「満月」にだって意味があるはずだ



「満月の夜といえば狼男だよね……!


まさか今夜って!」



なるほどそういう事か


こくりと頷き正解だと呟くおじさんを見てから私は考えた


満月になると獣達は活発になる


それは私達義獣人も同じ



「リューコちゃんは初めてこの施設で満月の夜を迎えるよね?


ここでは満月の夜になると就寝時間が早くなるんだ…というより夜は絶対に満月を見ないようにして活動することをルールとして定めているんだ。」



そうだったのか…知らなかった



確かにホームレスのような生活を送っていたとき、なぜか一ヶ月に一回興奮が収まらなかったことがあった。


満月の夜だから獣としての本能が疼きかけていたというわけか


しかし、ホームレス時代の私と今の私は生活様式が全く違う



食べてるものも寝床も知識の量も


今まで感じることがあまりなかった嬉しいという感情が最も私の心を動かしたのだ。


そのおかげで義獣人の力に耐えられる体ができた。



今の私が満月を見てしまえば本能のままに動くだろう



人間としての私なんか忘れてしまって



「だから今日は午前中のうちにスイーツを買ってすぐに帰ろう


満月の夜の仕事の組み方をしてるから皆今日は夜の六時には活動を終わらせて部屋に閉じこもるんだ。


自室には風呂トイレ別で小さなキッチンもあるからそこまで困らないよ」



どうやら個々の施設はかなりホワイトな組織のようです


そういえば私の部屋にはバス・トイレの他に勉強机と本棚が設置されてたな


かなりの贅沢空間だよね



「さあリューコちゃん、今日は時間がないから急いでスイーツを買うよ!」



私の手を優しくとって目的地を目指す秋元のおじさん


そういえば、前にポチが教えてくれたっけ



「いいかリューコ


秋元司令官はただスイーツが好きというわけじゃないんだ。


みんなと食べるから好きなんだ


だから司令官が一緒にスイーツを食べようと言ってきたらその言葉に従って一緒に食べてきなさい」



あの時ポチが教えてくれた言葉を私はしっかりと理解している


秋元のおじさんはみんなといい所にいることが好きなんだ


だからこそ聞きたくなる



「ねえおじさん」


「ん?どうしたんだいリューコちゃん」



まるで私を姪っ子か孫のように見て来るおじさんの真っ赤な目を


本当にこの人の瞳は宝石のようで綺麗だ


彼は本当にこの人の日本人なのか疑ってしまうほどに




「おじさんは義獣人の皆が好きなの?」




気になってしまう


このくらいは聞いてもいいよね?


だってあなたからすればこんなの子供の純粋な疑問であり質問でもあるんだからさ


さあ答えてよおじさん

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