1-10

彼女がどこかへ連れていかれてしまった


今度は私の番になる



「さてと…次は君ね」



来た…結局私は逃げられないのだ


さっきの獣人化した彼女に対してこの女は人の姿のまま対応して倒した…それほどの力を持ってる


今、私がここで獣人化して戦っても無駄だと理解するには十分過ぎる光景だったのだから。


抵抗しても無駄なのだ


諦めがついた私は静かに目を閉じてこの現実を受け入れることにした。


問題ない…1年前に戻るだけなのだから



「……何してんの?」


「覚悟は決めた…諦めて研究所に戻るわよ」



隣にいた男に聞かれて答えれば沈黙が続いた



………かと思えば何故か笑ってた



「ふふ…もしかして私達のこと研究所の回し者だと思ってるの?


残念だけど不正解


私達はあんな国が認めてない研究を勝手に進めて義獣人を作った奴らの手下なんかじゃないよ


まあ私達も国からお金を貰って活動してるからそう思われても仕方ないけどね…」



言ってる事の意味がわからなかった


ただひとつわかったのは




「あんたらは…何者なの?」







「まってましたよその質問


私達は国が認めた義獣人だけで結成された特殊部隊

警察にも陸上自衛隊にも海上自衛隊にも属さない私達は…


義獣人隊


安直だけどわかりやすいでしょ?」



義獣人隊…その言葉に私は惹かれた


私もその部隊に入ることは許されるのだろうか?



「義獣人隊……私は…そこに行くのか?」



震える声でそう聞けば、女はそうだと答えてまた私の頭を撫でた。



「君は義獣人隊に入ることが出来る


でも今からとなると、戦闘には出せない


まずは我々に保護して貰ってからだね」



あっそれと…と彼女はなにか思い出したように呟いて一度外に出ると袋を持った男と一緒に戻ってきて男が袋を差し出してきた。



「とりあえずさっきその辺で服を買ってきたからこれに着替えな


そしたら私達の家に帰るわよ」



袋の中には彼女の言ってた通り服が入ってた


どうしてサイズを知っているのか…恐ろしい



「そうだ…どうしてこの場所がわかったの?」



あまりにもことが早く片付いたので忘れていたが、何故彼女達は私の場所を特定することが出来たのだろうか?


いくらなんでも早すぎる気がする…それに彼女が追ってきたような気配も全くしなかった。



「そうだな…それは彼女のあだ名がポチだということと関係があるからな…」



そう言ったのは先程私に服を渡してきた男でタバコを吸い始めた。


ポチ…?もしかして犬のポチだとでも言いたいのだろうか?


そこの所どうなんだと言う意味を込めて彼女の方を向けば、彼女は苦笑いをしながら頭をかいていた。



「うーん…自己紹介の中に理由はあるよ…


私の名前は篠原 満月(しのはら みつき)


義獣人隊の隊長をやってる


年齢は27歳で獣人タイプはフェンリルだ


まあ狼の義獣人だから人よりも鼻がよく効くんだよ…


君の匂いも鼻を使って探したというわけさ!」



狼の義獣人…なるほどそれで


すると今度は隣にいた虹色のターバン男が自己紹介をしてきた



「僕の名前は浅倉 仁(あさくら じん)


義獣人隊の副隊長です


年齢は20歳で獣人タイプはユニコーン


よろしくお願いいたします!」



そう言ってぺこりとお辞儀をする仁



「俺も言うべき?


俺は山口 渚(やまぐち なぎさ)


年齢は22歳で獣人タイプはシーサーペント


まあウミヘビだな


タバコの匂いは平気か?」



この流れだと私も自己紹介をした方が良さそうだな



「私は五十嵐 灯…


正直いってこの名前は好きじゃないの


年齢は13歳で獣人タイプは…多分ドラゴンかな?


注射がないのなら…その義獣人隊に入ってもいい」



袋をぎゅっと抱きしめて上目遣いで3人を見るとまたにっこりと笑ってポチだけ私を抱きしめてきた。



「じゃあお前のあだ名はリューコだ!


だから私のことも名前じゃなくてあだ名のポチと呼びなさい!」



「そしたら僕はジェリーですね…」


「それ言ったら俺はニコか…相変わらずポチさんのネーミングセンスには呆れますよ」



私を抱きしめていたのをやめると今度は私の手を取って握手をしてきた




「ニコの発言は無視してくれても構わない!


これからよろしくなリューコ!」



その瞬間私の中にあったどす黒い何かは浄化されてなくなってしまった


私は歓迎されてる…?


必要とされてるのか?



気づけば私は泣いていてそれを止める術が見つからなくてそのまま拭き取ることも無く泣き続けた。



私は義獣人隊のリューコ


目の前にいるヒーロー達のために全力を尽くす



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