そして少年は人を笑わせることを夢にみた


「オタクでゲーマーで元ダンサーで落語家」

凄い文字列だ。本当に実在しているのだろうか。

もはや現代文学の「アクの強い主人公の友人」とかに付与されるべき肩書きだ――主人公から「一体なにを食ったらこんな男が出来上がるのだろう」とかいわれてしまうよな――

そんな人物の半生記が、面白くないわけがない。

現役の落語家で「オタクでゲーマーで元ダンサー」な氏の半生と、その傍らにあったビビッドでありながらセピア色なサブカルチャーたちが生き生きと跳ね回る様を描いたノンフィクションだ。

オタク黎明期、それこそ「オタク」という言葉すら生まれていなかったであろう時代からの、若者文化の隆盛。その潮流を泳いだナマの喜びの記録。ああ、いいなぁ。羨ましくなっちゃうな。

そして、ベギラマとカシナートの剣を携え、中つ国とロードスをまたにかけた少年は、紆余曲折へて落語家になるのである。(らしい)

うっそだろ。

レビュー時点の最新話ではいまだ高校生の「タナさん」が、一体これからどうして落語家を志すのか、よく考えればその前にダンサー編も控えているではないか。どんな切りもみ三回転をくりだせばそうなるのだ。ワクワクして目が離せない。

期待高まる一席だ、木戸賃握って乗り遅れるな!

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半生記