第3話 小学校中学年のころ

東陽から北砂に引っ越したのは、小学三年生に上がる春休みの事であった。

今まで通っていた江東区立東陽小学校に継続して登校する事になった。

約30分ずつ、行き帰りバスに揺られるので、本を持ち歩く習慣が出来た。

学校の図書館でルース・マニング=サンダーズの『世界の民話館』シリーズ(特に『竜の本』がお気に入りで、何度も借り直して読んだ)を借りたり、東陽町の駅の南側に江東区立東陽図書館があるので、川崎大治の『川崎大治民話選』シリーズ(『日本のおばけ話』や『日本のふしぎ話』が特に好きだった)を借りては、バスの中で読んでいた。

母方のじいちゃんが都バスの運転手だったので、運がいいとじいちゃんが運転するバスに乗れた。運転席の真後ろの席に座って、じいちゃんの運転を見てるのが好きだった。

四年生の頃、『スーパーマリオブラザーズ』の爆発的なヒットによって、ファミコンブームが起こった。ファミコン自体は二年前から売られていたのだが、『スーパーマリオ』で遊びたいから本体を買う、という様な一大ブームが起こったのであった。

僕自身、ゲームの類は好きで、それこそ『ゲーム&ウオッチ』やその類似品の電子ゲームはもちろんの事、『人生ゲーム』や『パーティジョイ』シリーズといったボードゲーム、トランプや『UNO』などのカードゲームで遊ぶ事もあったが、ファミコン本体が欲しいと思ったキッカケが、『ドルアーガの塔』のファミコン移植を知った時だった。

『ドルアーガの塔』は、ゲームセンターで一大ブームを生み出したゲームで、悪魔ドルアーガの築いた60階建ての塔に囚われた恋人・カイを救うために黄金の騎士・ギルガメッシュが挑むというストーリーのRPGの要素が入った迷路型のアクションゲーム。

僕はどうも、こうしたファンタジーという世界観が大好きで、雑誌などで『ドルアーガの塔』の情報を読んだりすると、興奮したものだった。

四年生の誕生日に親に強請って、ファミコン本体と『ドルアーガの塔』が我が家にやって来た時の感動は、今でも忘れられない。

毎日、『ドルアーガの塔』が遊べる!いつか、ドルアーガを倒すんだ!という希望を抱いた。

しかし、ここで母親が強大な壁として立ち塞がる。

「ゲームは一日、30分ね」

え?

高橋名人は「ゲームは一日、1時間」って言ってるよ?という子供の意見は通らない。

『ドルアーガの塔』は60階ある。30分でクリアするには、1フロア30秒でクリアする必要がある。当然、不可能である。

始めのうちこそ素直に従ったが、親の留守中に長時間プレイしているのがバレて、ACアダプターを没収、隠し場所を探し当てて遊び、また隠されるという攻防も、今となっては懐かしい想い出である。

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