類友はカルマに従う 番外編2-⑨

「あの……良かったら着けてもらえませんか。その難しくて……」

「えぇ、もちろん良いですよ」

 そう言って羽琉の持っていたブレスレットを受け取ると、エクトルは羽琉の左手首にそれを着けた。

「……きれい……」

 ポイントデザインを感慨深い表情で撫でる羽琉。

 嬉しさが滲み出るように徐々に頬を緩める羽琉に、その様子を見ていたエクトルは胸の内に溢れるものが抑え切れなくなった。

 そっと羽琉の顎に手を伸ばし、ブレスレットを見つめていた羽琉の視線を自分に向ける。

「キス、しても良いですか?」

 瞠目して「……え」と呟く羽琉に、エクトルは真剣な表情でもう一度訪ねた。

「愛しい羽琉にキスしたいです」

「……」

 真っ直ぐ見つめてくるエクトルに瞬きを繰り返した羽琉は、見る見る内に頬を赤く染めた。そして答えをジッと待つエクトルに、戸惑いつつも小さくコクリと肯いた。

 その肯きににっこりと微笑んだエクトルは、羽琉の顎に当てた手を緩く固定したままゆっくりと顔を近付けた。

「……」

 どんどん近づいてくるエクトルの端正な顔を、羽琉は凝視するように見つめる。すると唇が重なる前にエクトルがピタリと止まった。

「?」

 動きを止めたエクトルを疑問に思った羽琉だったが、見つめていたエクトルの口元の笑みが深まったことでハッと気づき、ギュッと目を閉じた。

 基本的なキスの仕方を知らない羽琉に、エクトルの中にある羽琉への愛しさが止まらなくなる。

 その想いを込めるように、キュッと目を閉じ、緊張して待っている羽琉の唇にエクトルは軽く触れるだけのキスをした。

「……」

 柔らかく温かいエクトルの唇の感触を微かに感じる。そしてエクトルが離れていく気配を感じた羽琉はしばらくして薄く目を開けた。

 だがエクトルは羽琉との距離をまだ縮めた状態で、笑みを湛えたままじっと羽琉を見つめている。

「……キスをするだけでこんなに胸が熱くなるのは初めてです。羽琉、大好きです。もっと、キスして良いですか?」

 恋人の熱の籠る眼差しで見つめられつつ再度訊ねられた羽琉は、自分の中にあるエクトルへの愛情を示すようにゆっくりと目を閉じると、羽琉の意を察して再び近づいてくるエクトルからの優しいキスに酔い痴れた。

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