風の囁き(バレット ep.2)

機械仕掛けの街で

時計塔の鐘が鳴る

今日もまた

燕が狼に捕まった


増え続けた落書きの痕

描いては消え

繰り返される粛清の涙


日々やまぬ抗争の中

狼の駆け回る音がする


人々は世も末と嘆き

路地裏の惨劇なんて気にも留めない

そうして存在を忘れ去られた

家無き燕たちの群れが

狼の標的となる


巷で流れる

神出鬼没のカラスや

足切り殺人の噂話

「狼も手一杯だ」と風の囁き


顔のない人々の群れが

狂気に隠れて繰り返す弾圧

そうして居場所を奪われた

一羽の燕が羽を切られた


今日もまた止まぬ雨

時計塔の音が鳴り響く

その合図に従って

散り散りになる

人影の中


ひとり


鬼の形相で狼を睨む

青年がいる


彼は己の異質さを悟られぬように

フードを被って現場を離れた

規則正しく目的地に向かう

顔無き人影に紛れるように


粛清の遠吠えが響く

この街はどうかしている

その独り言も聞こえぬように

ブラックコーヒーで飲み下した


意思なき人々の群れは

すでに好奇の目を覆い隠して

さっと雑踏に溶け

再び俯いて歩き始める


それを横目に眺めながら

クッキーを齧り

燕の行く先を

追うことに決めた

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