第5話

人間が死ぬ瞬間を見せられると、人はその驚愕の現実を受け入れることが出来ないらしい。暴れている瞬間までは、コメント欄で『殺せ』といった主張をしていた人たちや『早く誰か通報しろよ』と止めようとしていた人たち、様々な人がいたが、全く動かなくなった様子が映しだされた瞬間、ピタッとコメントが止んだ。


そして、俺のアナウンスが終わると、現実として受け入れることが怖いのか、『本当に死んだのか?』といった事態を疑うコメントが溢れた。


「どうも本当に死んだのかどうか疑っている人たちがいるようですね。それはそうでしょう。なので、本当に死んでいるという事を今から証明します。」


するとサイト上には、縄に括られた状態のままの人間が再び映しだされた。棒切れでいくら叩いても何の反応も示さない。その状態の人間を縄から外し、床に寝かせ、心電図を取り付けるも何の反応も示さなかった。


「残念ながら、今この瞬間に一人の命がこの世から失われました。他人の命や不遇に対し、救いの手を差し伸べる事をするのではなく、逆にその命を絶つ事を願う人間が多いせいで、一つの命が失われました。では、他人の命が絶たれる事を願った人たちを一人ずつ紹介していこうと思います。」


アナウンスを終え、俺はメンバーに指示を出した。


「本当にこのリストを公開するんですね。」

「そうだ。責任も罪も何もかも、全ては俺が背負うから安心しろ。」


サイトには、一枚の警告文が映された。


「警告文


ネット上のコメントとはいえ、誹謗中傷が大きな社会問題へと発展し、ネットリテラシーが叫ばれている昨今においても、何一つ問題意識を持たないばかりではなく、『高田大臣を殺せ』といった明確な個人を明記し殺せといった意思表示をする事は殺人幇助であると言わざるを得ないと判断しました。もちろん、個人情報保護の観点や名誉毀損という問題がある事は重々承知していますが、社会の為には、これ以上、他人を簡単に傷つけるような連中を放置していることも許されないと思い、注意喚起の意味も込めて個人情報を掲載すると共に、殺人幇助で警察に情報提供をすることにしました。」


警告文が掲載された後、『一人一人の顔写真、名前、生年月日、住所、勤務先など詳細な個人情報とコメント』がワンセットになったものが次から次へと掲載されていった。


すると、これまで静まり返っていたコメント欄に一つのコメントが投稿された。


「コメントした連中を晒すのは構わないが、このサイトの運営元が顔も名前も出さず安全圏にいる今の状態は、晒されている連中と同じだろ。」


このコメントを見た閲覧者は、一斉にこの流れに乗り始めた。静まり返っていたコメント欄は一気に勢いを取り戻し、再び大炎上し始めた。


「リーダー、とうとう我々を糾弾する流れになりましたね。」

「そうだな。じゃあ、そろそろネタバラシの段階に進む事にするか。」

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