第2話

大臣が監禁されている動画は、なんの前触れもなく突如として日本中に配信された。配信には独自に作られたWebサイト上に掲げられ、誰でも動画に対するコメントを投稿できる仕組みになっていた。


「今、ネット上に動画配信されました。コメント投稿も問題なく出来ています。」

「よし、各所の準備は万端だな。じゃあ、今から最高のショーを開演しようか。」


リーダーがSNSにサイトを共有するように指示した。すると、10分もしない間にサイトの閲覧者数が1000人を超えた。サイト上には、


「閲覧者数が100万人に到達したら、面白い事が始まります。それまでの間、コメント欄は自由にお使い頂けます。では、皆さんの力で1秒でも早く100万人へ到達できるようお力添え、よろしくお願いします。」

という文言と共に、猿轡をされナイフを頬に押し当てられている高田大臣の姿だけが映されている動画がアップされていた。


リアルタイムである事を証明するために、大臣の後ろに置いてあるテレビには現在放送されているテレビ番組が流されていた。


SNS上には、『高田大臣が監禁されているって本当?』『警察は何やっているんだよ』『無能な大臣なんて死んだって誰も困らないだろ』『大臣のそっくりさんなんじゃね?』といったコメントが溢れかえった。


現役大臣の監禁事件&リアルタイム配信という前代未聞の大事件に、マスコミも飛びついたことで、これがデマでもフィクションでもなく現実に起こっている大事件だと認識され、さらにSNS上では様々な意見が飛び交っていた。


サイトの訪問者は30分後には100万人を突破し、1000万人以上がアクセスしていた。コメント欄には、大臣の身を心配する声と目を疑いたくなるような罵詈雑言が書き込まれていたが、徐々に心配する声よりもネガティブな主張が大勢を占め始めていた。


「サイトをご覧の皆様、お忙しい中、配信をご覧頂きありがとうございます。コメント欄も大いに賑わっているようで何よりです。私たちの想定の何倍も早く100万人を突破してしまったため、こちらの準備が追いついておらず申し訳ありません。もう少々お待ちください。」


予想に反して待たされる事になったユーザー達の不満が大きくなり、コメント欄には、何が起きるかといった予想合戦や大臣を傷つけたり、死を望むようなコメントがこれまで以上に溢れかえった。


「馬鹿な人たちがコメントを投稿してますね。匿名だと思っているからか、とんでもない発言ばっかりですね。」

「人間なんて所詮はこんな程度だよ。表面上では世間体を気にして良い奴を演じているが、本心では権力を持った人間であったり気にくわない他人だったりが不幸に陥いる事を望んでいるものだ。」


「リーダー、準備が整いました。配信に載せていきますか?」

「そうだな、お客さんも我慢の限界が来ているだろうから、ボチボチ始めて行こう。」


サイト上には既に2000万人以上の視聴者がおり、コメント総数も1万以上されている状態になっていた。


「視聴者の皆さん、大変お待たせしました。準備が整いましたので、今から面白い事を始めていきます。」


コメント欄には、『待ってました』の声で溢れかえっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る